東京都の路上生活者におけるコロモジラミ症の再興

コロモジラミ(Pediculus humanus)は主として人間の着衣する下着等の衣類に寄生する衛生害虫で, 発疹チフス, 回帰熱, 塹壕熱などの感染症を媒介する(Ian, 1995;Didier and Veronique, 1999;大滝, 1999;加納, 1999). コロモジラミは戦争, 民族紛争, 自然災害時の避難民や兵士, 囚人などに発生が報告されてきた(WHO/CDC/WHOPES, 1997). 日本においては戦後の不衛生な環境時に発生が報告されたが(安居院, 1999), 発疹チフスの予防のためGHQが行ったDDT等の散布などで激減し(Crawford, 1986), 近年「幻の衛生害虫」とまで呼ばれている, 「ホームレス(路上生活者, 野宿者, 屋外生活者と同義)」を「公園, 道路, 河川敷, 駅舎等, 公共の空間で, テントや小屋を建てる, もしくはダンボールを敷いて寝泊りをするなどして日常の生活を送っている人々の総称」と定義した場合, 2001年9月末現在全国で約2万人, 東京都23区内で約5,600人が都心区から周辺区まで広範囲に渡り公園, 河川敷などで生活をしていることが報告されている.