知的障害を有するダウン症候群患者の習慣性顎関節脱臼に自己血注入療法 (ABI) を行った一例

要旨: 習慣性顎関節脱臼は臨床上しばしば遭遇する疾患であり, その治療選択は観血的手術からチンキャップ固定などの簡便な方法まで多岐にわたる. しかし, 高齢者や有病者, あるいはコミュニケーションが困難な患者においては観血的処置が適応しづらく治療法の選択に苦慮することも多い. 今回われわれは知的障害を有し意思疎通が困難なダウン症候群患者の習慣性顎関節脱臼に対し自己血注入療法(ABI)で加療し良好な結果を得た. 患者は62歳の女性である. 1日に1回の頻回な顎関節脱臼を主訴に受診した. ダウン症候群, 知的障害を有し指示動作は困難であった. 侵襲や術後管理の安全性を考慮し, レストレーナー(R)...

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Veröffentlicht in:障害者歯科 2020-10, Vol.41 (4), p.312-317
Hauptverfasser: 境野才紀, 栗原淳, 大隅麻貴子, 五味暁憲, 小杉謙介, 横尾聡
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:要旨: 習慣性顎関節脱臼は臨床上しばしば遭遇する疾患であり, その治療選択は観血的手術からチンキャップ固定などの簡便な方法まで多岐にわたる. しかし, 高齢者や有病者, あるいはコミュニケーションが困難な患者においては観血的処置が適応しづらく治療法の選択に苦慮することも多い. 今回われわれは知的障害を有し意思疎通が困難なダウン症候群患者の習慣性顎関節脱臼に対し自己血注入療法(ABI)で加療し良好な結果を得た. 患者は62歳の女性である. 1日に1回の頻回な顎関節脱臼を主訴に受診した. ダウン症候群, 知的障害を有し指示動作は困難であった. 侵襲や術後管理の安全性を考慮し, レストレーナー(R)と介助者による抑制下にABIを施行した. 術後6カ月の段階で脱臼頻度は月に1回程度に減少し, 患者・保護者ともに負担が軽減された. 知的障害を有し, 意思疎通が困難なダウン症候群患者の習慣性顎関節脱臼に対しABIは少ない侵襲で効果を得られる有効な手段の一つと考えられる. 今後, 意思疎通困難患者に対するABI適応の包括的なデータの蓄積が可能となれば標準治療となりうるが, ABI適応症例の基準や, ABI後の下顎運動制御法については検討課題である.
ISSN:0913-1663