ゲノム情報からプロテオームへ

今世紀の分子生物学を中核とした生命科学の発展がもたらした生命のプログラムともいえるゲノム情報技術が, 今日では医療の場でも実用化の域まで進展しつつある. 創薬研究および開発に深くかかわる薬物動態研究の新世紀に向けてのアプローチにも大きなインパクトを与えることであろう. ゲノム情報からの創薬研究プロセス(Genomic Drug Discovery Process)の中でも非臨床研究を前提としたヒトゲノム効果と薬物動態の因果関係, 特に正常モデル動物と疾患モデル動物とのゲノム情報は, 疾患とゲノム構造の関係を明らかにするであろう. また疾患モデルとヒト疾患のゲノム種差, in vitroとin...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:薬物動態 1997, Vol.12 (suppl), p.S144-S144
1. Verfasser: 野口照久
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:今世紀の分子生物学を中核とした生命科学の発展がもたらした生命のプログラムともいえるゲノム情報技術が, 今日では医療の場でも実用化の域まで進展しつつある. 創薬研究および開発に深くかかわる薬物動態研究の新世紀に向けてのアプローチにも大きなインパクトを与えることであろう. ゲノム情報からの創薬研究プロセス(Genomic Drug Discovery Process)の中でも非臨床研究を前提としたヒトゲノム効果と薬物動態の因果関係, 特に正常モデル動物と疾患モデル動物とのゲノム情報は, 疾患とゲノム構造の関係を明らかにするであろう. また疾患モデルとヒト疾患のゲノム種差, in vitroとin vivoの乖離について臨床検体における遺伝子発現プロフィルから疾患/治療関連遺伝子の探索などが現に試みつつある. ゲノム情報からの疾患原因遺伝子の同定や, 発病の鍵を握る遺伝子の発見には, ゲノム本体からのアプローチと, cDNAからのアプローチという大きく2つの流れが存在する. 前者の流れは, 特定の疾患家系の遺伝子を連鎖解析して, ポジショナルクローニングを行い疾患原因遺伝子を同定する方法であり, 原因不明で治療困難な難病において原因を明らかにすることに貢献している. 有用なマーカー遺伝子の開発や遺伝子地図の作製がそのための良い基盤となった. 実際この方法に基づいて肥満家系マウスから肥満原因遺伝子(ob遺伝子)の存在が明らかとなり, その遺伝子がコードする分泌型蛋白レプチンが同定され, その抗肥満効果が明らかとなった. また, 同様の蛋白がヒトでも存在し, 一部の肥満や糖尿病の発症に関与することが明らかとなった. そして現在レプチン受容体の同定やそれ以降の細胞内シグナル伝達系機構にまで研究が進められており, 肥満のメカニズム解明とその治療法の開発が有望視されている. また, cDNAからのアプローチによる情報は, ゲノムからのアプローチで明らかになった複数の遺伝子候補から原因遺伝子を特定する際に有益な情報をもたらす. 特に良い疾患家系が存在しない場合やゲノムからのアプローチが適さない疾患では有益な解析方法となる. 今後, ゲノムプロジェクトの進捗によりヒトゲノムの全塩基配列の解読が完了することから, 創薬研究や薬物動態研究に有用なゲノム情報を引き出すための情報収集および解析(Bioinformatics)の基盤が必要となってくる. ゲノム研究は疾患に関わる複数の遺伝子を特定すると同時に, 遺伝子と生物現象(疾患病態)との対応を明確にし, 更に薬物が真の姿で標的細胞や組織での薬効を発揮する活性蛋白質の動態を究める方法として, 最近注目されている2Dゲル/MS法によるプロテオーム解析(Proteome Analysis)についても言及したい.
ISSN:0916-1139