ハイパーサーミアと温熱抵抗性における小胞体ストレス応答の役割

がん温熱療法(ハイパーサーミア:HT)と化学療法,放射線療法やこれら両者との併用は,有効ながん治療法として位置付けられている.しかしながら,HTの問題点の一つは温熱抵抗性獲得であり,これが治療効果を低下させる.小胞体(ER)は,新生タンパク質の品質管理を行う主要な細胞小器官である.ERストレスは,ERにおいて構造異常のタンパク質の蓄積により感知され,細胞保護機構であるERストレス応答(unfolded protein response(UPR)とも云われている)を誘導する.ERストレスは,熱ストレス,グルコース欠乏,低酸素,カルシウム枯渇等,様々な病態生理学的な条件下で引き起こされる.この応答...

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Veröffentlicht in:Thermal Medicine 2020/07/15, Vol.36(2), pp.35-46
Hauptverfasser: 田渕, 圭章, 古澤, 之裕
Format: Artikel
Sprache:eng ; jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:がん温熱療法(ハイパーサーミア:HT)と化学療法,放射線療法やこれら両者との併用は,有効ながん治療法として位置付けられている.しかしながら,HTの問題点の一つは温熱抵抗性獲得であり,これが治療効果を低下させる.小胞体(ER)は,新生タンパク質の品質管理を行う主要な細胞小器官である.ERストレスは,ERにおいて構造異常のタンパク質の蓄積により感知され,細胞保護機構であるERストレス応答(unfolded protein response(UPR)とも云われている)を誘導する.ERストレスは,熱ストレス,グルコース欠乏,低酸素,カルシウム枯渇等,様々な病態生理学的な条件下で引き起こされる.この応答は,ER膜上の三種類の異なるセンサー分子,IRE1(inositol requiring enzyme-1),PERK(protein kinase R-like ER kinase)とATF6(activating transcription factor 6)を介して行われる.非ストレス条件下では,BiP(HSPA5: heat shock protein family A (Hsp70) member 5)がこれらのセンサー分子と結合している.一方,ERストレス条件下では,BiPがタンパク複合体から解離し,三種類のセンサー分子の活性化が誘導される.興味深いことに,IRE1, PERKとATF6シグナル経路の全て,または,それらの一部が熱ストレスを負荷した細胞で活性化されることが判っている.本総説では,HTや温熱抵抗性におけるERストレス応答の役割について要約する.
ISSN:1882-2576
1882-3750
DOI:10.3191/thermalmed.36.46