歩行分析シリーズ: 6.膝関節疾患の床反力分析

床反力分析を応用して, 整形外科的治療介入の効果をどう評価するか, の問題について, 今回解説する. 例題は, 変形性膝関節症に対する人工関節置換手術の術前・術後の分析結果の比較を採りあげる. 膝関節障害の臨床的評価基準については, すでに日本整形外科学会・日本膝関節研究会が定めた変形性膝関節症治療成績判定基準(以下JOA score)があり1), これが一般的に術後成績評価の基準として使用される(Fig. 1). 臨床的には我々は, まずこれに準拠し, これを中心に成績評価をすすめるべきとの見解をとる. 床反力周波数分析による評価指数は物理量の計測に基づくので, これと観点を異にし, 臨床判定を補完する立場に来るものと位置づけられる. 両者の評価法の相違点をあげれば, まず臨床評価基準(JOA score)は:1. 患者からの問診に基づくものであるから, その判定には治療者と患者との両方の主観が混入する. また, 術者が自ら評価するのであるから, 術後どちらのカテゴリーに分類すべきか迷う場合は, 成績のよいほうに振分けておこう, となるのが人情の常というものだ.