原発性肺クリプトコッカス症の1手術例

「要旨」肺癌の診断上, 鑑別のまぎらわしい疾患の一つとして, 限局性の肺クリプトコッカス症があるが, 今回, 我々も, 肺癌を疑われ, 術直前のB.F.S,を利用した経気管支的肺生検およびブラッシングにて確診し得た1例を経験した. 患者は, 37才, 男で胸部レ線上, 右中肺野に塊状影を指摘され, 手術目的で入院し, 右中葉切除施行後, 化学療法剤を施行することなく, 治癒することができた. 本邦において文献的に報告されている原発性肺クリプトコッカス症, 29例の切除報告例に, 我我の1例を加えて, 文献的に考察を加えた. 肺癌の診断上, 鑑別のまぎらわしい疾患の一つとして, 限局性の肺クリプトコッカス症をあげることができる. この疾患はCryptococcus neoformansによる感染症で, 中枢神経系に親和性が強く, 髄膜炎を発症し発見されることが多いとされていたが, 近年, 肺に限局した切除例の報告が増加してきた. 我々も今回, 肺癌を疑われ, 術直前のB.F.S.を利用した経気管支的肺生検およびブラッシングにより確診し得た1例を経験したので, 文献的考察を加え, その詳細を報告する.