適応療法としての温泉療養の臨床医学的意義

温泉の生体作用研究は, これまで主として含有成分の薬効学的作用によるとする考えに立って行われてきた. しかし近年, このアプローチで温泉作用を説明することは不適当であり, したがって泉質分類から適応症をきめることもできないと考えられるに至った. このことは第60回日本温泉気候物理医学会総会のパネル「泉質と適応症」においても示されたところである. 泉質分類をさらに細分化して温泉作用を解明する考えもあるが, これが成功する可能性は少ないように思われる. ここにおいてHoffによって提唱され, わが国では副次的と考えられてきた非特異的刺激としての温泉作用を, あらためて基本的に検討する必要に当面して...

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Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:日本温泉気候物理医学会雑誌 1981, Vol.44(3-4), pp.85-91
1. Verfasser: 辻, 秀男
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:温泉の生体作用研究は, これまで主として含有成分の薬効学的作用によるとする考えに立って行われてきた. しかし近年, このアプローチで温泉作用を説明することは不適当であり, したがって泉質分類から適応症をきめることもできないと考えられるに至った. このことは第60回日本温泉気候物理医学会総会のパネル「泉質と適応症」においても示されたところである. 泉質分類をさらに細分化して温泉作用を解明する考えもあるが, これが成功する可能性は少ないように思われる. ここにおいてHoffによって提唱され, わが国では副次的と考えられてきた非特異的刺激としての温泉作用を, あらためて基本的に検討する必要に当面しているように思われる. 温泉治療を温泉地療養という概念でとらえているドイツでは, この考え方はすでに定着しているようである1). Hildebrandt u. Jungmann2)はBaderkalender(1980)において, 非特異的環境刺激療法としての温泉治療概念を解説している. ただこの治療概念が臨床の実際にどの程度具体化されているかは明かでない. 著者はこれまで温泉治療を非特異的刺激と考える立場から検討してきた. そこでその経験をふまえて温泉治療学の臨床医学における意義や役割を考察してみたい.
ISSN:0029-0343
1884-3697
DOI:10.11390/onki1962.44.85