東北地方における湯治概況調査成績

I緒言 吾々は前報1)2)3)4)5)6)7)8)9)10)に引続き, 山形県衛生部の委嘱により昭和33年12月1日より同15日まで山形県東根温泉に短時間療養相談所を開設し, 療法相談に応ずると共に湯治概況を調査し, 且つ泉浴と毛細管抵抗値との関係について些か知見を得たので報告する. II東根温泉について 1)位置及び交通 本温泉は奥羽本線東根駅の北東方約1粁に位し(第1図), 村山盆地の北東隅を占める冲積平地に湧出する温泉で, 山形市及び近郷との間にバスの便がある. 東は甑岳及びその前山を背景とし, 南西方は広い沃野をへだてて遠く朝日連峯の雄姿を雲表に眺め, 又西方に月山, 葉山を指呼の間に望み, その長閑な環境は保養に好適な田園温泉地として親しまれている. 2)地質及び湧出状況 温泉街は泉川によって作られた扇状地の上にあり, その東方は凡そ巾600mの沃野をへだてて, 第三紀凝灰岩層及び石英粗面岩の発達した奥羽山脈の山脚がつづいている. この温泉は明治43年天野又右エ門氏が灌漑用水掘抜きの際に湧出したのに端を発し, 爾来今日まで百数十本に達するさく井が行なわれたのであるが, 昭和32年東根温泉協同組合を作り, 全国でもまれな源泉管理を実施し, 現存する50数本の源泉を4本に統合し, 効果的温泉利用のモデル温泉地として注目されている(第2図).