48. 腸炎ビブリオにおけるガラクトース輸送系の解析

腸炎ビブリオの細胞膜には, 主たるグルコース輸送系としてグルコース-PTS(phosphotransferase system)が存在する. 私達はグルコース-PTS(およびトレハロース-PTS)を欠損する腸炎ビブリオ変異株において, 第二のグルコース輸送系が存在することを見いだした. そしてこの系はNa+とグルコースのシンポート系(共輸送系)であることを明らかにした. この系の生化学的解析の過程で, グルコースと共にガラクトースがこの輸送系の極めてよい基質となることが分かった. 更に, この系は培地にグルコースを加えることにより活性の低下(リプレッション)が見られるのに対し, 培地にガラクトースを加えると活性の上昇(インダクション)が見られることが分かった. これらのことから, この輸送系は本来ガラクトース輸送系と呼ぶべきものかもしれない. ガラクトース存在下で生育させた細胞において, ガラクトースを基質として輸送を調べたところ, 10mMのNaCl存在下で輸送活性が10倍以上に上昇した. Li+でも同様の活性上昇が見られたが, 他のカチオンでは効果は見られなかった. また, 電極法により細胞へのガラクトース流入に伴うNa+の取り込みを調べたところ, 確かにNa+の取り込みが見られた. ガラクトース輸送系のキネティックパラメーターに対するNa+の影響を調べたところ, Na+は輸送の最大速度には影響を与えず親和性を高めることが分かった. ガラクトース輸送に対する競合実験を行ったところ, ガラクトースに次いでグルコース, フコースもこの系の基質となることが確認された.