子宮頸癌に対する内視鏡手術

浸潤子宮頸癌に対する手術療法として我々は開腹による広汎子宮全摘出術(RH)および骨盤～IMA下までのリンパ節郭清を標準的に行ってきた. 海外では1990年代前半から婦人科悪性腫瘍に対して内視鏡下手術が導入されて以来その件数は激増している. 一方, わが国では, 内視鏡下手術の普及, 手術手技の向上, および手術機器の開発にともない, 婦人科悪性腫瘍に対する手術を腹腔鏡下に行っている施設はあるものの非常に少ないのが現状である. その安全性ならびに長期予後に関しては未だ不明の点が多く, あくまでも研究的なものとして位置づけられている. 我々は, 2003年から浸潤子宮頸癌に対する内視鏡下手術の導入にあたり院内倫理委員会の承認を得て患者に対し十分なICのもと内視鏡下手術を施行してきた. その内訳を以下に示す. 放射線治療の対象となる進行子宮頸癌で照射野決定のためPAN生検(廓清)を施行した(12例). 6例に対しては腹腔内アプローチで, 6例に対しては後腹膜アプローチで施行した. 平均手術時間, 平均摘出リンパ歯数はそれぞれ104分(85～121), 8.2個(4～15);222分(156～270), 34.7個(23～61)であった(後腹膜アプローチでは総腸骨節も含まれているため差が出ていると思われる). リンパ節転移は1例ずつ陽性であった. 浸潤子宮頸癌ではあるが深い円錐切除(deep CONE)により病巣が取りきれていて子宮温存を強く希望する症例(6例)に対して鏡視下リンパ節廓清を追加し子宮は温存した. 3例に対しては腹腔内アプローチで(SCC 1例, adeno 2例), 3例に対しては後腹膜アプローチ(すべてSCC)で施行した. 平均手術時間, 平均出血量, 平均摘出リンパ同数はそれぞれ382分(330～412), 85ml(20～125), 72個(51～93);463分(409～536), 120ml(10～325), 64個(54～75)であった. リンパ節転移は認められなかった. 6例すべて生存しており, 平均50ヶ月(22～73)経過している. 6例のうち2例は既婚であった. そのうち1例で積極的挙児希望がありARTにより妊娠が成立した. 35週, PROMのためC/Sにて健児を得た. Ia～IIa期の浸潤子宮頸癌(腺癌を含む)に対して腹腔鏡下広汎子宮全摘術(LRH)および骨盤リンパ 節郭清(症例によりIMA下PANまで含む)を13例施行した. 平均手術時間, 平均出血量, 平均摘出リンパ節数はそれぞれ617分(463～974), 764ml(55～2650), 65個(38～103)であった. typelVのLRHでは, 我々 が通常開腹で行っているのと同様の骨盤神経温存術式を行った. 今までのところ再発例を認めていない. Ib1の扁平上皮癌に対して鏡視下広汎子宮頸部切断術(LRT)および骨盤リンパ節廓清を1例施行した. deep CONEでは病巣は断端陽性であった. LRT時に術中迅速病理を行い断端陰性になるまで頸管を切除した. 永久標本でも断端は陰性で, 術後約2年経過するも再発徴候は認めていない. ARTによる妊娠成立を試みている. 本シンポジウムでは, 我々が経験した子宮頸癌に対する内視鏡手術(PAN生検＝12例, deep CONEおよび鏡視下LND:6例, LRH:13例, LRT＝1例)計32例に関して若干の文献的考察を交え, また手術内容, 手術手技の工夫などのビデオを供覧しながら報告する.