良性卵巣腫瘍核出後に発生した極めて稀なPort site metastasisの1例

良性卵巣腫瘍に対して腹腔鏡下手術を選択する例は増加しているが, 術中術後に悪性卵巣腫瘍と判明する例も稀に存在する. 今回, 腹腔鏡下卵巣腫瘍核出術後, 初回の摘材では良性腫瘍と診断されたが, 2ヵ月後に腹水貯留とトロッカー転移(port site metastasis)をきたした極めて稀な1例を経験したので報告する. 症例は32才の未妊婦, 不妊症および子宮内膜症の診断で前医で加療されていた. 左チョコレート嚢胞の精査および加療目的で, 2003年11月12日, 当科へ紹介された. 12月16日腹腔鏡下卵巣腫瘍核出術を施行した. 左卵巣は5cm大で, 左右付属器ともに子宮後壁に強固に癒着し,...

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Hauptverfasser: 北島道夫, 藤下晃, 森山伸吾, 小寺宏平, 増崎英明, 中島久良, 重松和人, 田口尚, 石丸忠之
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:良性卵巣腫瘍に対して腹腔鏡下手術を選択する例は増加しているが, 術中術後に悪性卵巣腫瘍と判明する例も稀に存在する. 今回, 腹腔鏡下卵巣腫瘍核出術後, 初回の摘材では良性腫瘍と診断されたが, 2ヵ月後に腹水貯留とトロッカー転移(port site metastasis)をきたした極めて稀な1例を経験したので報告する. 症例は32才の未妊婦, 不妊症および子宮内膜症の診断で前医で加療されていた. 左チョコレート嚢胞の精査および加療目的で, 2003年11月12日, 当科へ紹介された. 12月16日腹腔鏡下卵巣腫瘍核出術を施行した. 左卵巣は5cm大で, 左右付属器ともに子宮後壁に強固に癒着し, ダグラス窩は完全閉塞していた. 癒着剥離後, 左卵巣腫瘍を体内法で核出した. 核出時に被膜破綻し, 淡茶色の粘液性内容液の流出を認めた. 術後3日目に退院し, 摘出卵巣の病理診断はserous and mucinous cystadenomaであった. 2004年2月, 右下腹部の腫瘤および腹部膨満感を自覚し近医(内科)を受診, 腹水貯留も指摘され当科を再診, MRIで多量の腹水貯留および左付属器腫瘤が認められ, 2月25日当科入院した. 左右のトロッカー刺入部に一致して腫瘤を触知, 腹腔穿刺細胞診で悪性細胞が認められたため, port site metastasisの診断で3月1日開腹術を施行した. 腹腔内には淡黄色漿液性腹水が約3, 300ml貯留しており, 左卵巣は鶏卵大に腫大, 右卵巣表面にも結節状転移巣を認めた. 右トロカール刺入部には皮下から腹膜に裾野状に広がる腫瘍を形成し, 左トロッカー刺入部にも結節性腫瘤を認めた. 腸間膜表面にも多数の微細な播種性病変を認め, また大網は板状硬であった. 卵巣癌IIIc期と診断し, 単純子宮全摘, 両側付属器摘除, 大網切除および左右腹壁皮下結節摘除術を施行し, 現在術後化学療法を施行中である. 摘出材料の病理診断はmalignant mesothelioma with rhabdoid feature, undifferentiatedなどと考えられる組織像を呈しており, 初回手術時の摘出標本すべてを追加切り出しし, 複数の病理学者による検討を行ったが悪性所見は得られなかった.
ISSN:1884-9938