A-8. ラット唾液腺におけるステロイド合成酵素の存在と唾液分泌におよぼす影響

近年, 中枢神経においてコレステロールを元にしたステロイドホルモンの生合成代謝過程が存在すること, ステロイド合成の初期段階で生産されるプレグネノロンは, ニューロステロイドとして抑制性のGABA A受容体のサブユニットに結合し, 受容体機能を促進することが明らかとなった. 唾液腺にもGABA A受容体が存在することから, これらステロイドの産生機構が存在し唾液分泌機能を調節している可能性が考えられる. 本研究において, ステロイドホルモンが唾液分泌におよぼす影響を明確にするとともに, 生合成酵素のmRNAとタンパク質の存在を明らかにすることを目的として実験を行った. ウィスター系雄性ラットを...

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Veröffentlicht in:歯科薬物療法 2009, Vol.28 (3), p.163-163
Hauptverfasser: 大久保みぎわ, 宮下卓, 澤木康平, 四宮敬史, 中川寛一, 川口充, 覚道健治
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:近年, 中枢神経においてコレステロールを元にしたステロイドホルモンの生合成代謝過程が存在すること, ステロイド合成の初期段階で生産されるプレグネノロンは, ニューロステロイドとして抑制性のGABA A受容体のサブユニットに結合し, 受容体機能を促進することが明らかとなった. 唾液腺にもGABA A受容体が存在することから, これらステロイドの産生機構が存在し唾液分泌機能を調節している可能性が考えられる. 本研究において, ステロイドホルモンが唾液分泌におよぼす影響を明確にするとともに, 生合成酵素のmRNAとタンパク質の存在を明らかにすることを目的として実験を行った. ウィスター系雄性ラットを用い, ステロイドが生体内で代謝されることを避けるため, また, 唾液腺に直接作用させるためにペントバルビタール麻酔下にて, 顎下腺動脈にカニューレーションし灌流系を作成した. その後, 各種ステロイドを還流し, 唾液分泌量変化の測定を行った. 次に, ステロイド代謝酵素であるCyp11A1の発現を検索した. メタンフェタミンを2週間腹腔内投与後, 1週間の休薬を行い, 断薬によるストレスを発現させたラットの唾液腺のCyp11A1の発現をRT-PCR法, Western blot法にて検索した. 灌流実験においてHBSS-Hで灌流したラット顎下腺にカルバコール刺激を与え, プレグネノロン, プレグネノロン硫酸エステル, GABA Aアゴニストのムスカリン, アンタゴニストのビククリンによる影響を調べたところ, 全ての薬物処置において唾液分泌量の減少が認められた. プレグネノロンとムシモールは, カルバコールによる唾液分泌を, 用量依存性に抑制したが, プレグネノロン硫酸エステルはほとんど影響を与えなかった. ビククリンは, プレグネノロンとムシモールの唾液分泌抑制作用を回復したが, プレグネノロンでは, 回復効果は弱かった. ムシモールによる唾液分泌抑制作用は, プレグネノロンの併用により増強したが, プレグネノロン硫酸エステルの併用により減弱した. また, RT-PCRによるCyp11A1 mRNAはメタンフェタミン断薬ストレス負荷群において大脳皮質, 唾液腺全てでコントロール群より有意に多く発現した. 唾液腺では耳下腺での発現が最も多く, 舌下腺は最も少なかった. WesternblotによるCyp11A1タンパク質発現の検索でも同様であった. 以上の結果からステロイドの生合成機構が唾液腺にも存在し, GABA A受容体とカップリングして唾液分泌の抑制性の調節に関与していることが示唆された. 質問 覚道健治(大阪歯大):ストレスを断薬にされた理由を教えて下さい. 質問 覚道健治(大阪歯大):なぜストレスの方法としメタンフェタミン断薬ストレスにしたのか? それ以外のストレスを与えるとどうなるのか? 回答 大久保みぎわ:断薬ストレス以外の方法を行っていないのでその点は今後, 検討させていただきます. ただし, 今回の研究ではストレスの負荷はあくまでも唾液腺にステロイド合成気が存在することを証明するための手段として行っています.
ISSN:0288-1012