ガイドライン (指針) を根拠に刑事訴訟に至った事例の検討

[要旨] 平成20(2008)年に麻酔科医が後期研修医の指導のため手術室不在時, 麻酔器の蛇管が外れたことに起因する事故が発生した. 院内調査委員会では蛇管が外れた原因は特定できず, アラーム音は外科医などには聞こえなかったとした. 担当麻酔科医は, ガイドライン(指針)の記載内容を根拠に刑事訴追された. 裁判官は, (1)蛇管が外れた原因は手術室にいた人の行為が原因と推測する, (2)手術室にいた人にアラーム音が聞こえなかったことには疑問の余地が少なからずある, (3)指針は学会としての目標を示すもので, 遵守すべき業務上の注意義務とは言えない, として無罪を言い渡した. ガイドラインは,...

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Veröffentlicht in:日本臨床麻酔学会誌 2015-01, Vol.35 (1), p.120-127
Hauptverfasser: 木内淳子, 安本和正, 後藤隆久, 野坂修一, 小林功武
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:[要旨] 平成20(2008)年に麻酔科医が後期研修医の指導のため手術室不在時, 麻酔器の蛇管が外れたことに起因する事故が発生した. 院内調査委員会では蛇管が外れた原因は特定できず, アラーム音は外科医などには聞こえなかったとした. 担当麻酔科医は, ガイドライン(指針)の記載内容を根拠に刑事訴追された. 裁判官は, (1)蛇管が外れた原因は手術室にいた人の行為が原因と推測する, (2)手術室にいた人にアラーム音が聞こえなかったことには疑問の余地が少なからずある, (3)指針は学会としての目標を示すもので, 遵守すべき業務上の注意義務とは言えない, として無罪を言い渡した. ガイドラインは, 刑事訴訟においても, 医療水準を示す資料の1つであるとされた. 「はじめに」近年, 日本麻酔科学会など多くの学会で診療におけるガイドラインが作成され, 多大な成果をあげているが, ガイドラインの記載内容を根拠にして訴訟が行われるようになった.
ISSN:0285-4945