ラットのホルマリンテストで誘発されるFlinch行動の信頼性について
〔目的〕ホルマリンテストにより誘発されるラットの特異的行動(Lift, Lick, Flinch)は, ラットが疼痛を表現する疼痛関連行動といわれ, 疼痛研究の動物モデルとして広く用いられている. 疼痛関連行動の中でも, 特にFlinchは識別が容易であることから, Flinchに着目した報告が多い. しかし, Flinchと臨床の場で遭遇する「痛み」の推移には一致しない点も認められる. そこで, ホルマリンによって誘発されるFlinchは果たしてラットの疼痛を表現する行動であるのか否かを脳波的に検討したので報告する. 〔実験の仮説〕疼痛の存在下ではラットの自然睡眠は阻害されるから, 脳波は覚...
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Veröffentlicht in: | PAIN RESEARCH 1998-12, Vol.13 (3), p.127-127 |
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Hauptverfasser: | , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 〔目的〕ホルマリンテストにより誘発されるラットの特異的行動(Lift, Lick, Flinch)は, ラットが疼痛を表現する疼痛関連行動といわれ, 疼痛研究の動物モデルとして広く用いられている. 疼痛関連行動の中でも, 特にFlinchは識別が容易であることから, Flinchに着目した報告が多い. しかし, Flinchと臨床の場で遭遇する「痛み」の推移には一致しない点も認められる. そこで, ホルマリンによって誘発されるFlinchは果たしてラットの疼痛を表現する行動であるのか否かを脳波的に検討したので報告する. 〔実験の仮説〕疼痛の存在下ではラットの自然睡眠は阻害されるから, 脳波は覚醒波を示すであろう. 一方, 自然睡眠中にラットは疼痛を感じてはいないであろうから, 脳波は睡眠波を示すであろう. 〔実験方法〕体重350~450gの雄SDラット5匹を用いた. ペントバルビタール麻酔下で開頭し体性感覚野の硬膜上に脳波導出用双極電極を接着させデンタルセメントで頭骸骨に固定し, 手術侵襲からラットが完全に回復してから実験を行った. ラットを観察箱に入れ無拘束の状態で左後肢足底部に生食100μlを皮下注してから90分問, 脳波の連続記録と行動を観察し対照とした. 5%ホルマリン液100μlを左後肢足底部に皮下注射した後, 脳波と疼痛関連行動の観察を行った. 更に, 抗痙攣薬カルバマゼピンを投与してから30分後にホルマリンを投与し, 同様の観察を行った. Flinchは出現頻度の総数, LiftとLickはそれらの行動に費やした時間を測定した. 脳波はMacLab systemにより連続記録し, 高速フーリエ変換を行ったデータに対して周波数分析を行った. 〔結果〕(1)疼痛関連行動はホルマリン投与直後に発現し(第1相), 一時消失する時期(移行期)を介して, 再び出現する時期(第2相)を経てホルマリン投与から約60分後に投与前の行動に戻る経過, すなわち2相性を示した. (2)脳波はホルマリン投与直後から移行期を含めて覚醒波を示した. すなわち1相性の経過を示した. (3)ホルマリン投与後40分頃より脳波は睡眠波が出現しはじめたが, 疼痛関連行動は持続していた. (4)カルバマゼピン投与によりFlinch, Lickは抑制され, Liftは抑制されない傾向を示した. 〔考察と結語〕本実験に採用した仮説が許されるならば, 脳波と疼痛関連行動との乖離する事実は, ホルマリンによって誘発される行動を疼痛と直結させるには問題のあることを示している. 特に, Flinchは疼痛とは無関係に出現する単なる痙攣行動である可能性を強く示唆している. |
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ISSN: | 0915-8588 |