人工歯根埋入術による下歯槽神経障害に対し針治療が奏効した一症例
下歯槽神経障害は, 埋伏智歯の抜歯など下顎における外科手術や外傷などにより引き起こされる. その症状は, 患側の下唇部, オトガイ部, 下顎の歯, 歯肉の知覚麻痺, 知覚過敏等の知覚異常である. 今回われわれは, 人工歯根埋入術による下歯槽神経障害に対して針治療が奏効した症例を経験したので報告する. 症例 患者は66歳の女性で, 1992年4月中旬にA歯科医院にて下顎左側大臼歯部に人工歯根を埋入したところ, 左下唇, オトガイ部, 下顎の歯, 歯肉に知覚麻痺が出現した. 4月20日にB歯科医院にて人工歯根を除去したところ, わずかに麻痺の範囲の縮小がみられた. その後知覚過敏も出現し, 199...
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Veröffentlicht in: | PAIN RESEARCH 1997, Vol.12 (3), p.195-195 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 下歯槽神経障害は, 埋伏智歯の抜歯など下顎における外科手術や外傷などにより引き起こされる. その症状は, 患側の下唇部, オトガイ部, 下顎の歯, 歯肉の知覚麻痺, 知覚過敏等の知覚異常である. 今回われわれは, 人工歯根埋入術による下歯槽神経障害に対して針治療が奏効した症例を経験したので報告する. 症例 患者は66歳の女性で, 1992年4月中旬にA歯科医院にて下顎左側大臼歯部に人工歯根を埋入したところ, 左下唇, オトガイ部, 下顎の歯, 歯肉に知覚麻痺が出現した. 4月20日にB歯科医院にて人工歯根を除去したところ, わずかに麻痺の範囲の縮小がみられた. その後知覚過敏も出現し, 1994年秋には下顎左側中切歯および側切歯に咬合痛が出現した. 1996年8月7日にC歯科医院にて下顎左側中切歯の抜髄処置をうけたが痛みは変わらなかった. そこで, 知覚麻痺と知覚過敏も続いているため, 当科を紹介され, 12月9日に来院した. 当科では下歯槽神経障害の診断のもとに, 12月11日から3回のソフトつぼ電極通電を行い, 翌1月8日から週1回針治療を行った. 知覚過敏の強い左下唇2カ所と下関, 大迎の計4カ所に刺針しこれをマイナス電極とし, 左足底部にプラス電極を装着して, 3Hzの周波数で30分間の通電を行ったところ, 6回目から下顎左側前歯部の咬合痛が和らいできた. また同時に左オトガイ部の正中に近い部位の知覚過敏が緩和された. 10回目には左下唇部も正中付近の知覚過敏が和らいだ. 11回目には左口角付近の麻痺がほとんど消失した. このように神経障害の症状は著しく改善されたが, さらなる改善のため, 現在も針治療を継続中である. 考察 下歯槽神経障害に対しては, 外科的療法は困難で, 通常ビタミンB群, ATP製剤等の薬物療法と温熱療法, マッサージなどの理学療法が行われる. 当科ではこのような症例に対して, 知覚麻痺や知覚過敏等の症状の緩和を目的として主に針治療を行っている. 今回の症例では, 障害を受けてから4年8ヶ月も経過したにもかかわらず比較的短期間で針治療によって大きな改善がみられた. |
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ISSN: | 0915-8588 |