D-アミノ酸酸化酵素欠損マウスにおけるホルマリン反応の増強と脊髄後角内興奮性シナプス伝達の変化

〔緒言〕金野らは, D-アミノ酸酸化酵素(DAO)欠損マウスを確立し, このマウスでは脳内にD-serineが増加していることを見いだした. D-serineは, NMDA受容体のグリシン結合部位に作用し, NMDA受容体電流を増強すると報告されている. 中枢神経内では, シナプス前終末端から放出されたグルタミン酸がグリア細胞に作用してD-serineを放出させ, そのD-serineがシナプス後細胞のNMDA受容体に働くことにより, 興奮性シナプス伝達が調節作用を受けていると示唆されている. 今回我々は, DAO欠損マウスにおいて, NMDA受容体を介するシナプス伝達に変化が見られるか否かを...

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Veröffentlicht in:PAIN RESEARCH 1997, Vol.12 (3), p.151-151
Hauptverfasser: 半澤晋二, 崎尾秀彰, 金野柳一, 丹羽章, 堀雄一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:〔緒言〕金野らは, D-アミノ酸酸化酵素(DAO)欠損マウスを確立し, このマウスでは脳内にD-serineが増加していることを見いだした. D-serineは, NMDA受容体のグリシン結合部位に作用し, NMDA受容体電流を増強すると報告されている. 中枢神経内では, シナプス前終末端から放出されたグルタミン酸がグリア細胞に作用してD-serineを放出させ, そのD-serineがシナプス後細胞のNMDA受容体に働くことにより, 興奮性シナプス伝達が調節作用を受けていると示唆されている. 今回我々は, DAO欠損マウスにおいて, NMDA受容体を介するシナプス伝達に変化が見られるか否かを検討した. 〔方法〕成熟したマウスの後肢にホルマリンを皮下注射し, 誘発されるLicking反応の継続時間を計測し, DAO欠損マウスと正常マウスとで比較した. また, 生後3~4週令のマウスの脊髄を摘出し, 厚さ360μmのスライスを作製し, IR-DIC下に脊髄後角表層(Rexed laminae II~III層)に分布するニューロンを直視し, ホールセル記録を行った. ビククリンおよびストリキニンによって抑制性シナプスをブロックし, 周辺の神経線維に電気刺激を加え誘発される興奮性シナプス電流(EPSC)を膜電位固定下に記録した. 膜電位をプラスに固定し, 灌流液にAPVまたはCNQXを加えることによって, EPSCをNMDA受容体を介する成分とnon-NMDA受容体を介する成分とに分離した. NMDA成分とnon-NMDA成分の振幅を, DAO欠損マウスと正常マウスとで比較した. 〔結果〕ホルマリン皮下注射に対するLicking反応の2nd Phaseは, 髄腔内に投与したMK-801によって抑制され, 脊髄内のNMDA受容体の活性化を介することが示唆された. この2nd Phaseは, 正常マウスに比べてDAO欠損マウスで有意に増強していた. また, EPSCのNMDA成分とnon-NMDA成分の振幅の比が, DAO欠損マウスで有意に大きな値を示した. 〔まとめ〕DAO欠損マウスでは, 中枢神経内のNMDA受容体を介するシナプス伝達が正常マウスに比べて活性化されやすい状態にあり, その結果, 慢性疼痛刺激に対する反応などの行動にも変化が生じていることが示唆された.
ISSN:0915-8588