ヒスタミン(H1)受容体を発現するモルモット後根神経節細胞

皮膚などの末梢組織で産生されるヒスタミンが, 発痒あるいは発痛物質として働くことはよく知られている. ヒスタミンの受容体には三つのサブタイプ(H1-3R)が存在するが, ヒスタミンのこのような作用は, 知覚神経終末に存在するH1Rを介することが薬理学的に示唆されている. そこで我々は, モルモット知覚神経節においてH1RmRNAを発現するニューロンの存在を, in situハイブリダゼーション(ISH)法を用いて明らかにし, さらにこれらのニューロンとSP/CGRP作動性ニューロン群との関係, 末梢神経損傷時の変化等について検討を加えた. 〔方法〕雄性モルモット(約500g)を灌流固定した後,...

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Veröffentlicht in:PAIN RESEARCH 1996, Vol.11 (3), p.210-210
Hauptverfasser: 樫葉均, 福井裕行, 上田至宏, 錦織綾彦, 仙波恵美子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:皮膚などの末梢組織で産生されるヒスタミンが, 発痒あるいは発痛物質として働くことはよく知られている. ヒスタミンの受容体には三つのサブタイプ(H1-3R)が存在するが, ヒスタミンのこのような作用は, 知覚神経終末に存在するH1Rを介することが薬理学的に示唆されている. そこで我々は, モルモット知覚神経節においてH1RmRNAを発現するニューロンの存在を, in situハイブリダゼーション(ISH)法を用いて明らかにし, さらにこれらのニューロンとSP/CGRP作動性ニューロン群との関係, 末梢神経損傷時の変化等について検討を加えた. 〔方法〕雄性モルモット(約500g)を灌流固定した後, 三叉神経節, 迷走神経の下神経節, 後根神経節(L4-5)を取り出し, 凍結切片を作成し, H1RmRNAを検索すべくISH法に供した. 特に後根神経節においては, その薄切連続切片を用いて, H1RmRNAとSP, CGRP, 及びIB4陽性構造(ラットでは無髄線維のマーカーとして知られているレクチンの一種)との共存を検討した. また, 坐骨神経を切断あるいは坐滅し, 3日, 7日, 14日, 28日後, 灌流固定し, 後根神経節の凍結切片をISH法に供した. プローブは, モルモットH1R遺伝子のcDNA(1192-3189; 2kb)をもとに, ^^35 S標識cRNAを作成し, 加水分解して使用した. 〔結果と考察〕H1RmRNAは三叉神経節及び後根神経節の約10-20%の細胞で強くそのシグナルを発現しており, これらは主に小型(small size)の細胞であった. しかしながら, 迷走神経の下神経節ではH1RmRNAのシグナルは認められなかった. また, 後根神経節において, 10-20%のニューロンがSP/CGRPに陽性を示し, 70-80%の細胞(ほとんどが小~中型)がIB4に陽性を示した. H1RmRNAを発現する細胞はIB4に陽性を示したが, 大部分はSP/CGRP陽性ではなかった. これらの結果は, ヒスタミン感受性の後根神経節細胞は無髄線維を有するが, 大部分はSP/CGRP作動性のニューロン群とは別のサブグループに属することを示している. 一方, 坐骨神経を損傷すると, 損傷側の後根神経節において3日後より28日までH1RmRNAを発現する細胞の増加が観察された(健常側の2~3倍). また, 神経損傷後にH1RmRNAを発現する細胞もほとんどが小型であった. このことから, 末梢神経損傷時にはより多くの小型後根神経節細胞がヒスタミンに感受性を示すようになり, それが疼痛や痛覚過敏の発症に影響を与えている可能性が考えられる.
ISSN:0915-8588