交感神経ブロックによるパンコースト腫瘍の疼痛管理

パンコースト腫瘍は解剖学的に頸・腕神経叢に近いため神経への圧迫, 浸潤により種々の神経症状や疼痛を引き起こすが, その症状は腫瘍の進展の程度により多彩である. 今回, パンコースト腫瘍による疼痛管理を3例経験し, そのいずれに対しても交感神経ブロックが有効であったので報告する. 症例 1) 49才男性 肩および上肢痛, ホルネル症候群を呈し放射線療法, 化学療法施行中. 塩酸モルヒネ80mg+ペンタゾシン45mg/日の投与を受けていたが腕神経叢への浸潤による疼痛のため睡眠, 横臥が困難となり疼痛管理を依頼された. 星状神経節ブロックの繰り返しにより仰臥位による睡眠が可能となった. 症例2) 6...

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Hauptverfasser: 竹内幹夫, 亀沢隆司, 堀場清, 野口宏, 佗美好昭
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:パンコースト腫瘍は解剖学的に頸・腕神経叢に近いため神経への圧迫, 浸潤により種々の神経症状や疼痛を引き起こすが, その症状は腫瘍の進展の程度により多彩である. 今回, パンコースト腫瘍による疼痛管理を3例経験し, そのいずれに対しても交感神経ブロックが有効であったので報告する. 症例 1) 49才男性 肩および上肢痛, ホルネル症候群を呈し放射線療法, 化学療法施行中. 塩酸モルヒネ80mg+ペンタゾシン45mg/日の投与を受けていたが腕神経叢への浸潤による疼痛のため睡眠, 横臥が困難となり疼痛管理を依頼された. 星状神経節ブロックの繰り返しにより仰臥位による睡眠が可能となった. 症例2) 60才男性 肺尖部腫瘍による上肢-背部痛. 塩酸モルヒネ40mg/日の投与を受けていたが, 疼痛による不眠のため疼痛管理を依頼された. 硬膜外チューブからの0.4%キシロカインにより疼痛消失. 以後, 3週間の持続ブロックにより疼痛は消失し退院可能となった. 症例3) 80才男性 肺尖部腫瘍. 頸部-上肢痛のため睡眠障害あり. 塩酸モルヒネ40mg/日で効果ないため, 疼痛管理を依頼された. 硬膜外チュービングおこない, 0.3%キシロカインを注入し疼痛消失する. 以後0.4%キシロカインによる3週間の持続ブロックにより疼痛は消失した. 考察:肺尖部腫瘍による疼痛管理に対しては, 薬物療法, 放射線療法, 神経破壊療法等が選択される. 今回の症例は, 症例1, 2では薬物療法, 放射線療法ともに効果が不十分であり, 症例3では患者が放射線療法を拒否したため用いることができなかった. いずれの症例も試験的に交感神経ブロックをおこない, その有効性を確認したのちに持続ブロック, あるいは交感神経ブロックを繰り返し施行した. 星状神経節ブロックでは3-4回目, 硬膜外神経ブロックでは約1週間後より症状の著明な改善が観察された. パンコースト腫瘍の痛みは, モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬や放射線療法に対しても一定の効果が見られるため, 効果の不十分な症例に対して神経破壊術が施行されてきた. つまり, 疼痛除去のためには, 体性神経のブロックが必要であると考えられてきたが, 今回の3症例はいずれも交感神経ブロックによって疼痛の著明な改善をみた. 体性神経ブロックに代えて交感神経節ブロックを試みた理由は, 癌の告知がなされていないため, 神経破壊術の施行には無理があると判断されたためである. 今回の結果は, パンコースト腫瘍の疼痛管理に対して, より非侵襲的な神経ブロック法で治療しうる可能性を示唆している. 今後, さらに症例を重ねて交感神経ブロックの作用機序について, 検索を進めたい.
ISSN:0915-8588