後根神経節細胞におけるVIP, ガラニンおよびNPYmRNAは前根切断により増加する

〔目的〕 末梢神経の障害により後根神経節(DRG)細胞において, VIP(vasoactive intestinal peptide), ガラニン(galanin), NPY(neuropeptide Y)が増加することは知られているが, それらの発現調節の詳細については分かっていない. 我々は昨年, 軸索流をブロックすることで, VIP及びガラニンが増加することを報告した. これはVIP, ガラニンの発現を抑制する神経栄養因子(NTF)の存在を示唆するものである. しかしながら, 軸索の変性に伴う外的環境の変化もまた無視することはできない. そこで, 前根切断による運動神経の軸索の変性がDR...

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Veröffentlicht in:PAIN RESEARCH 1992, Vol.7 (3), p.196-196
Hauptverfasser: 樫葉均, 野口光一, 上田至宏, 錦織綾彦, 仙波恵美子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:〔目的〕 末梢神経の障害により後根神経節(DRG)細胞において, VIP(vasoactive intestinal peptide), ガラニン(galanin), NPY(neuropeptide Y)が増加することは知られているが, それらの発現調節の詳細については分かっていない. 我々は昨年, 軸索流をブロックすることで, VIP及びガラニンが増加することを報告した. これはVIP, ガラニンの発現を抑制する神経栄養因子(NTF)の存在を示唆するものである. しかしながら, 軸索の変性に伴う外的環境の変化もまた無視することはできない. そこで, 前根切断による運動神経の軸索の変性がDRGでのペプチド発現に与える影響をIn Situ Hybridization(ISH)法を用いて検討した. 〔方法〕 Wistar系雄性ラット(約200g)を用い麻酔下において, 一側性に脊髄L4-5レベルの前根切断, もしくは後根切断を行なった. 一週間後, ISH法にてVIP, ガラニン及びNPYmRNAをDRG(L4-5)の凍結切片上において検出し, それらの陽性細胞の割合を比較検討した. 〔結果〕 無処置ラットのDRGにおいては, VIP及びNPYmRNAを発現する細胞はほとんど認められず, ガラニンmRNAを発現する細胞は1%以下であった. 前根切断後, 同側のDRGにおいていずれのmRNAも無処置ラット及び対側のそれと比べ増加していた. VIP mRNAを発現している細胞は全体の約5%で, ほとんどが小型の細胞であった. ガラニンmRNAを発現している細胞は三者の中では最も多く, 10-20%であり, 小型の細胞に加え大型の細胞にもみられた. NPYmRNAはほとんどが大型の細胞に発現しており, 全体の5-10%であった. 対側のDRGにおいて, それぞれのmRNAを発現する細胞はやや増加する傾向がみられた. VIP及びNPYmRNAは約1%の細胞に発現しており, ガラニンmRNAを発現している細胞は約3%であった. また, NPYmRNAは後根切断においてやや増加したが(約0.5%), VIP及びガラニンmRNAはほとんど影響を受けなかった. 〔考察〕 前根切断, つまり運動ニューロンの軸索の変性によりDRG細胞において, VIP, ガラニンおよびNPYmRNAが増加することを示した. しかしながら, DRG細胞の中枢枝を傷害(後根切断)しても, これらのペプチドのmRNAの発現にはほとんど影響がなかった. これらの結果は, これらのペプチド発現において末梢枝が重要な役割を果たしており, 末梢枝の傷害はもとより, それをとりまく外的環境の変化によっても影響を受けることを示唆する. 例えば, 変性した運動神経の軸索をとりまくシュワン細胞やその標的器官である筋においてNGF(神経成長因子)の産生が亢進することが知られているが, これらのペプチドを発現するDRG細胞はこのNGFなどのNTFを取り込んでいる可能性が考えられる. そしてこれらのNTFが血行性に運ばれ対側のDRGにも影響を与えたのかも知れない.
ISSN:0915-8588