興奮性アミノ酸により惹起される侵害反応に対する合成サケカルシトニンの抑制効果

カルシトニンは血清中のCaの低下因子として知られているペプチドであるが, 最近の研究では癌性疼痛や骨粗しょう症の疼痛に対する鎮痛作用をもつことがわかってきている. ヒトにおいて各種原発性の骨転移のための激痛にサケカルシトニン(SCT)は有効であり, その効果は用量依存性を示さずSCT 100IU/dayが200IU/dayよりも強い鎮痛作用を示すこと, また, SCT100IU/dayを乳癌原発の骨転移した患者に28日間投与したところ著名な鎮痛効果が見られたが血清Ca値や骨に変化が見られなかったといった報告がされている. この様に, カルシトニンの鎮痛作用のメカニズムはまだよくわかっていない....

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Veröffentlicht in:PAIN RESEARCH 1991, Vol.6 (3), p.194-194
Hauptverfasser: 前田洋子, 長谷川高明, 鍋島俊隆, 亀山勉
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:カルシトニンは血清中のCaの低下因子として知られているペプチドであるが, 最近の研究では癌性疼痛や骨粗しょう症の疼痛に対する鎮痛作用をもつことがわかってきている. ヒトにおいて各種原発性の骨転移のための激痛にサケカルシトニン(SCT)は有効であり, その効果は用量依存性を示さずSCT 100IU/dayが200IU/dayよりも強い鎮痛作用を示すこと, また, SCT100IU/dayを乳癌原発の骨転移した患者に28日間投与したところ著名な鎮痛効果が見られたが血清Ca値や骨に変化が見られなかったといった報告がされている. この様に, カルシトニンの鎮痛作用のメカニズムはまだよくわかっていない. 一方, 興奮性アミノ酸であるN-methyl-D-asparlte(NMDA)は神経細胞内へのCaの流入を促進する作用を持っている. また, NMDAをはじめ他の興奮性アミノ酸のkainic acid(KA)およびquisqualic acid(Quis)をマウスの脊髄髄腔内(i.t.)に投与すると発痛物質として知られるサブスタンスPと同様にscratchingやtail bitingといった侵害反応を惹起する. そこで今回, サケカルシトニンの抗侵害作用と用量との関係を酢酸writhing法を使って観察し, また, NMDA, KAおよびQuisによりて惹起される侵害反応をSCTが抑制するかどうかを観察し検討した. 5週令のddY系雄性マウスを使用した. 酢酸writhing法ではSCTをマウスの脳室内(i.c.v.)に投与し, その10分後に0.6%の酢酸を腹腔内に投与し, 10分後から10分間に惹起されたwrithingの数を測定した. 興奮性アミノ酸により惹起される侵害反応に対するSCTの抑制作用については, SCTをマウスのi.c.v.に投与し, 20分後にNMDA, KAまたはQuisをi.t.投与し, 侵害反応を開始してから3分間, 侵害反応していた時間を測定した. SCTは酢酸によって惹起されたwrithingの数を有意に減少させた. その作用は, 0.1IU/mouseの用量でピークとなり, ベル型用量曲線を示した. NMDA, KAおよびQuisは用量依存的にscrathingやtail bitingなどの侵害反応を惹起した. SCTは, NMDA, KAおよびQuisにより惹起される侵害反応を有意に減少させた. その作用は, 0.1IU/mouseの用量でピークとなり, ベル型用量曲線を示した. マウスにおいて, SCTは酢酸writhingおよび興奮性アミノ酸の脊髄髄腔内への投与により惹起される侵害反応に対して抗侵害作用を持ち, その作用はヒトと同様にベル型用量曲線を示した. 従って, 上記侵害反応はヒトでのSCTの鎮痛作用を検討する上でよいモデルとなる可能性がある. SCTはCa代謝に関与しており, NMDAによって惹起される侵害反応を有意に抑制したことから, NMDAによる神経細胞内へのCaの流入に影響を及ぼす結果, 抗侵害作用を発現しているのかも知れない.
ISSN:0915-8588