糖尿病性壊疽のADLに及ぼす影響

糖尿病患者の下肢壊疽には, 糖尿病性神経障害によるneuropathic gangrene, 閉塞性動脈硬化症による壊疽, 細菌感染による壊疽が認められ, 糖尿病患者にはこれらの3病変が混在し, 鑑別が困難なことが多い. 糖尿病患者の下肢壊疽の罹患率は, 非糖尿病患者に比較して遥かに高い. 糖尿病性神経障害により痛覚が低下・消失しているためか, 現況を正確に認識しない傾向があり, 糖尿病患者はneuropathic gangreneに骨髄炎や敗血症を併発した進行した状態で来院することが多い. 糖尿病性壊疽は糖尿病の罹患率の増加と共に深刻な問題となっているが, 糖尿病性壊疽が糖尿病患者のADLに...

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Hauptverfasser: 横田千津子, 宇川康二
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:糖尿病患者の下肢壊疽には, 糖尿病性神経障害によるneuropathic gangrene, 閉塞性動脈硬化症による壊疽, 細菌感染による壊疽が認められ, 糖尿病患者にはこれらの3病変が混在し, 鑑別が困難なことが多い. 糖尿病患者の下肢壊疽の罹患率は, 非糖尿病患者に比較して遥かに高い. 糖尿病性神経障害により痛覚が低下・消失しているためか, 現況を正確に認識しない傾向があり, 糖尿病患者はneuropathic gangreneに骨髄炎や敗血症を併発した進行した状態で来院することが多い. 糖尿病性壊疽は糖尿病の罹患率の増加と共に深刻な問題となっているが, 糖尿病性壊疽が糖尿病患者のADLに及ぼす影響に関する報告は少ない. そこで, 糖尿病性壊疽が糖尿病患者のADLを制限するか否かについて検討した. 「対象」過去11年間, 本院代謝・内分泌内科に42人(男/女;31/11)の糖尿病患者が壊疽を主訴に66回入院, 男15名と女4名は壊疽のため数回入退院を繰り返していた. 糖尿病の罹病期間は14,3±1.5年以上, 糖尿病のコントロールは不良, 壊疽発症年齢は58.6±2.3歳, 全ての患者に糖尿病性網膜症・腎症・進行した神経症の合併を認めた. 「結果」糖尿病性壊疽に蜂窩織炎や骨髄炎を合併した進行した状態ではあったが, 進行した糖尿病性神経症により痛覚が消失しており, 壊疽のみでは歩行を含めた日常生活に支障はなく, 糖尿病性neuropathic gangreneは, 糖尿病患者のADLに影響を与えなかった. 本院では, 糖尿病性下肢壊疽の85%は保存的治療にて治癒したが, 15%は下肢切断を要したが, 欧米諸国と比較すると低率であった. 第1趾の切断のみにても術後は姿勢の保持や歩行が困難なことが多く, ADLが制限され, 装具を使用しても術前のADLまで改善することは困難なことが多かった. このため, 姿勢保持や歩行のためのリハビリテーション治療を行うことと, 壊疽の再発予防のための患者のみならず家族を含めたfoot careに対する教育が, 下肢切断後のADLを維持するために重要であると考えられる.
ISSN:0034-351X