健忘と運動機能に改善を示した頭部外傷後の1症例

頭部外傷の15歳男性例を経験した. 入院時, 寝たきりで, 即時記憶, 近時記憶に障害が認められ, 聴覚刺激課題での事象関連電位P 300が陰性だったが, その後P 300は陽性となり, 潜時が短縮していった. P 300の意義には諸余の議論があるが, 今回, 神経心理学的検査成績との関連を経時的に追究し考察した. 【主訴】歩けない, 忘れる. 【現病歴】平成6年12月, 自転車走行中に軽トラックにはねられ意識不明. 頭部CTにて, 脳室内穿破を伴うSAH, 急性硬膜下血腫, 皮質および皮質下に微小の血腫あり, 保存的に加療し, 平成7年3月, 当科入院. 【入院時現症】意識清明. 四肢麻痺....

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Veröffentlicht in:リハビリテーション医学 1996, Vol.33 (11), p.861-861
Hauptverfasser: 川津学, 衛藤誠二, 重信恵三, 久松憲明, 川平和美, 田中信行
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:頭部外傷の15歳男性例を経験した. 入院時, 寝たきりで, 即時記憶, 近時記憶に障害が認められ, 聴覚刺激課題での事象関連電位P 300が陰性だったが, その後P 300は陽性となり, 潜時が短縮していった. P 300の意義には諸余の議論があるが, 今回, 神経心理学的検査成績との関連を経時的に追究し考察した. 【主訴】歩けない, 忘れる. 【現病歴】平成6年12月, 自転車走行中に軽トラックにはねられ意識不明. 頭部CTにて, 脳室内穿破を伴うSAH, 急性硬膜下血腫, 皮質および皮質下に微小の血腫あり, 保存的に加療し, 平成7年3月, 当科入院. 【入院時現症】意識清明. 四肢麻痺. 【検査】失語, 半側無視, 失行なし. 順唱4桁, 逆唱3桁. AVLT即時再生2-6-5-8-6/15, 遅延再生3/15. 長谷川テスト7/30. 簡易Kohsテスト0/50. 【MRI】両側頭葉内側部に萎縮. 【経過】発症4.5カ月には, 順唱6桁, 逆唱5桁, AVLT即時再生9-10-8-11-7/15, 遅延再生8/15, 長谷川テスト19/30, 簡易Kohsテスト32/50と改善した. 後2者は引き続いて改善を示し, 発症16カ月には27/30, 120/131(Kohs本法)となった. P 300は発症6カ月に陽性に転じ, その後, Pzの潜時が440 msから発症16カ月には302 msに短縮した. なおこの間, 運動機能の改善は続き発症7.5カ月にはT字杖と両短下肢装具にて安全歩行を達成した. 【結論】P 300の出現と潜時の短縮は必ずしも大脳皮質の全般的な機能改善を意味しないが, 頭部外傷後の高次脳機能の初期の回復の指標にはなりうると思われた.
ISSN:0034-351X