老人保健施設における長期滞在入所者の実態
【はじめに】通常3カ月をめどに家庭ないしは社会復帰するための通過施設といわれる老人保健施設(以下, 老健施設)に1年以上入所している長期滞在者の現状を把握するため, 実態調査を行った. 【対象と方法】高知県下の某老健施設における長期入所者60名を対象に, ADL向上群, 無変化群, 悪化群の3群を分類し, 退所阻害因子, 生活意識面などの関連を検討した. 【結果】全入所者60名のうち, ADL向上群は5名(8.3%), 無変化群32名(53.3%), 悪化群23名(38.3%)であった. 年齢は向上群76.8±3.8歳, 無変化群79.8±7.8歳, 悪化群81.3±8.6歳であった. 入所期...
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Zusammenfassung: | 【はじめに】通常3カ月をめどに家庭ないしは社会復帰するための通過施設といわれる老人保健施設(以下, 老健施設)に1年以上入所している長期滞在者の現状を把握するため, 実態調査を行った. 【対象と方法】高知県下の某老健施設における長期入所者60名を対象に, ADL向上群, 無変化群, 悪化群の3群を分類し, 退所阻害因子, 生活意識面などの関連を検討した. 【結果】全入所者60名のうち, ADL向上群は5名(8.3%), 無変化群32名(53.3%), 悪化群23名(38.3%)であった. 年齢は向上群76.8±3.8歳, 無変化群79.8±7.8歳, 悪化群81.3±8.6歳であった. 入所期間は向上群519.4±162.2日, 無変化群707.8±53.3日, 悪化群717.7±74.8日であった. 家庭復帰可能と思われる向上群, 無変化群の退所阻害因子の第一は, 家庭問題(介護者がいない, など)であった. これら向上群, 無変化群の施設に対する意見の第一は継続滞在, 次いで訓練の充実, 食事改善の順であった. 生活意識としての将来の希望や生き甲斐を調査したところ, 向上群で継続滞在を希望し, 無変化群で家庭復帰, 悪化群で希望なしであった. 【まとめ】障害老人に対する医療の機会均等の原則に立ち, きめ細かいリハビリテーションの量的質的向上はもちろんのこと, 老健施設の本来的機能を回復するためには, 行政面での改善(医師, PT, OTなどの医療従事者の定員改正など)も望まれるところである. |
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ISSN: | 0034-351X |