手指切断の問題点

手指切断は, 上肢切断の中でも症例数が多いにもかかわらず, これまであまり報告がない. しかし, 手指切断者のかかえる問題は心理的・社会的に深刻である. 今回, 退院後の患者にアンケート調査をし, 回答のあった9例についてまとめた. 【結果】切断の原因は, 労災事故が9例中4例あった. 残りに農作業事故が2例あったが, これは労災補償のような援助がないため, 機械化農業の盲点と思われた. 切断手指の愁訴は長期にわたって続くようで, なかでも冷感の訴えが多い. しびれ, ひきつりがそれに続く. 義手（指）は日常生活で使用する者はない. 使おうとしても, 内部に汗がこもったり, 皮膚炎を起こすため長時間の使用に耐えない. 「期待はずれ. 動かない指があっても役に立たない. 変色. 大きい. 硬い」など, 材質に対する不満が多い, これは装飾用義手が治療用義手の対象となっていないため, われわれ医療現場の者の耳に直接入ってくることが少なく, また, われわれが異議を唱えていく先もない. 装飾用であろうとも治療用とすべきである. 手指切断の等級要綱の見直しも必要である. 1指・2指の優位に偏重しすぎており, 残存面積などをもっと考慮し, disabilityを重視したものに改善するよう提案したい. 心理的には, 諦めきれない性格の患者では, 機能的に使いにくいことが加わるためうつ状態となるので, 周囲の理解が必要となる.