失語症者の復職後の心理的問題について

高度情報社会による職場環境の変化の中で, 情報伝達手段に障害をもつ失語症者の復職後の職業・言語・収入・生活全般の心理的問題を線分法QOLスケールを用い, 発症直前就業していた失語症者75名を対象に調査した. 当院の都市型リハの性格を反映し, 復職者は42名(56%)と高率であった. また, 自立移動(復職群98%, 非復職群18%)は復職の一条件と考えられた. さらに, 被雇用者の復職の困難性が示された(自営業・会社経営者67%, 被雇用者52%). また被雇用者の1/3が配置転換され, 仕事の慣れ, 対人関係などに問題を認めた. QOL調査の結果, 職業では1/2が低下し, 配置転換・人間関...

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Hauptverfasser: 前田真治, 小池三奈子, 石毛美代子
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:高度情報社会による職場環境の変化の中で, 情報伝達手段に障害をもつ失語症者の復職後の職業・言語・収入・生活全般の心理的問題を線分法QOLスケールを用い, 発症直前就業していた失語症者75名を対象に調査した. 当院の都市型リハの性格を反映し, 復職者は42名(56%)と高率であった. また, 自立移動(復職群98%, 非復職群18%)は復職の一条件と考えられた. さらに, 被雇用者の復職の困難性が示された(自営業・会社経営者67%, 被雇用者52%). また被雇用者の1/3が配置転換され, 仕事の慣れ, 対人関係などに問題を認めた. QOL調査の結果, 職業では1/2が低下し, 配置転換・人間関係・会社の人の疾病理解不足, 身体麻痺, 喚語困難など多彩な問題を認めた. また, 事務から肉体労働へなど, 高度情報化社会の職種の稀少化も問題となった. 言語では3/4が低下し, 喚語困難などの不安が問題であった. また向上例がなく, QOL向上を目標とした対策は今後の課題と思われた. 収入では病前後の額の増減に影響を受けたが, 能力相応とみる例が多く, 金銭を媒体とし自己の障害を受容しているとも推察できた. 生活全般では食事・生活制限等に不満があったが, 家族協力で全般的には満足していた. 以上より, 失語症者の復職は身体症状・職歴にも依存するが, 本人・周囲の人を含め, 現職に対する配慮や, 喚語困難対策, 疾病理解, 収入額の説明, 家族協力などがよりよい失語症者の社会生活をもたらすと考えられた. <質疑応答> 前田守(中伊豆リハセンター):ウェルニツケ型とモーター型とで葛藤の違いはあるのか. モーター型がもどかしくイライラを感じることを経験する. 前田真治:ウェルニッケタイプでは病態認知が低下しているために楽観的な態度をとる者もいた. おしなべればブローカタイプに比して深刻でない傾向にはあるが, ケースバイケースの対応が不可欠であった. 前田真治:患者の障害受容に対する問題については, 入院中や病院に通院している時はまわりに同じような障害者がいて問題はあまりないような症例でも, 会社のような健常人の中に入ることでより強調されるような例があり, 心理的にも注意が必要である.
ISSN:0034-351X