脳卒中片麻痺患者における大腿骨頸部骨折について

脳血管障害患者の経過観察中にわれわれはしばしば転倒による骨折に遭遇する. 当院を開設した平成1年12月1日から平成2年11月31日までに外来あるいは入院にて経過観察中の脳卒中片麻痺患者のうち, 転倒により大腿骨頸部骨折を呈し術後当院で再訓練を行った13例について, その骨折状況および機能予後について検討した. 男2例, 女11例と女性が大半を占め, 年齢は50~90歳. 平均年齢70.4歳. 70歳以上が8例と過半数を占めた. 原疾患は脳梗塞9例, 脳内出血4例. 障害は右片麻痺7例, 左片麻痺6例. 骨折側は右8例, 左5例で, このうち12例で麻痺側と骨折側が一致していた. 骨折は大腿骨頸...

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Hauptverfasser: 田中正樹, 松本衣代, 伝田吉平, 石川誠
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:脳血管障害患者の経過観察中にわれわれはしばしば転倒による骨折に遭遇する. 当院を開設した平成1年12月1日から平成2年11月31日までに外来あるいは入院にて経過観察中の脳卒中片麻痺患者のうち, 転倒により大腿骨頸部骨折を呈し術後当院で再訓練を行った13例について, その骨折状況および機能予後について検討した. 男2例, 女11例と女性が大半を占め, 年齢は50~90歳. 平均年齢70.4歳. 70歳以上が8例と過半数を占めた. 原疾患は脳梗塞9例, 脳内出血4例. 障害は右片麻痺7例, 左片麻痺6例. 骨折側は右8例, 左5例で, このうち12例で麻痺側と骨折側が一致していた. 骨折は大腿骨頸部骨折内側骨折6例, 外側骨折7例. 骨折前の移動能力は独歩2例, 杖歩行自立2例, 杖装具歩行自立2例, 杖装具歩行介助3例, 車椅子2例と高齢者が多い割には比較的レベルが良かった. 骨折は在宅生活中が6例, 入院中が7例であり, 入院中の例ではベッドからのtransfer時の転倒が多く, 全例でtransfer自立していたものの骨折に先立って全身状態の悪化が認められたことが転倒の主因と考えられた. 骨折の発生時間は夜間に集中しており, 年齢はすべて70歳以上であった. 13例中軽度の痴呆を3例に認めたが, 訓練導入に多少手間取ったものの術後の歩行能力の改善には支障なかった. Brunnstrom stage Vの2例が骨折後車椅子レベルにとどまっていたが, 骨折前からの廃用性筋力低下や糖尿病に付随する症状が原因と考えられた. この2例以外の11例では, 術後3カ月目には骨折前の歩行レベルに戻っており, 6カ月後には更に歩行能力の改善をみたものが3例あった. これらは脳卒中の回復過程の途中であったことや, 痙攣や糖尿病のコントロールが良好となり本来の歩行能力を引き出せたためと考えられた. <質疑応答> 前島伸一郎(藤田保健衛生大):(1)どんなADLの患者が転倒するのですか. その面からのアプローチが必要なのではないですか. (2)転倒は麻痺等に多いのでは. (3)転倒を防ぐべく付添いはつけていないのですか. 田中正樹:(1)どの時期, どのレベルでも片麻痺患者は転倒するので, 医師が逐一その患者の移動方法をチェックすることで予防をめざしています. (2)そのとおりの傾向があります. (3)完全看護であり, ナースコールの工夫で転倒する前に駆けつけられるようにしています. 前田守(中伊豆リハセンター):(1)夜間の転倒は左の失認に多く, 排尿行為時にみられませんか. (2)看護体制(付添)で, その転倒の責任はどこにありますか. 水落和也(横浜市民病院):術後のエクササイズプログラムは片麻痺患者については特別なものをやっておられますか. 田中正樹:一般の大腿骨頸部骨折術後のエクササイズプログラムで対応しています. 平澤泰介(座長):抗痙攣剤投与例に骨折例が多いようですが, これに対する対策はどのように行っておられますか. 田中正樹:症例数が少ないので何とも言えません.
ISSN:0034-351X