脳卒中患者における体性感覚誘発電位の波形分類

脳卒中患者のSEP波形を分類し, CT所見とあわせて各波形成分の起源について検索した. また, この波形分類と移動動作の予後について検討した. 対象は脳梗塞59例, 脳出血18例, その他3例の計80例である. 年齢は38~89歳, 麻痺型は右30例, 左48例, 両側2例であった. 【方法】 SEPの電気刺激は手関節部の正中神経に加え, C3’, C4’, F3’, F4’およびErb点と両耳朶間で導出した. 500回の平均加算を行った. 健常成人94人を正常対照群とした各波形成分の正常値を算出し, これらの頂点潜時をEP, N16, N19, P24, N31, N62と命名した. 判定に...

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Hauptverfasser: 橋本務, 北村嘉雄, 種池英次, 鳴嶋真人, 松田昌弘, 小西英樹, 浅田莞爾, 松田英雄, 島津晃
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:脳卒中患者のSEP波形を分類し, CT所見とあわせて各波形成分の起源について検索した. また, この波形分類と移動動作の予後について検討した. 対象は脳梗塞59例, 脳出血18例, その他3例の計80例である. 年齢は38~89歳, 麻痺型は右30例, 左48例, 両側2例であった. 【方法】 SEPの電気刺激は手関節部の正中神経に加え, C3’, C4’, F3’, F4’およびErb点と両耳朶間で導出した. 500回の平均加算を行った. 健常成人94人を正常対照群とした各波形成分の正常値を算出し, これらの頂点潜時をEP, N16, N19, P24, N31, N62と命名した. 判定には各頂点潜時からEP潜時を差引いた値を用いた. 【結果および考察】 (1)SEP波形分類とCT所見について:N16成分とそれ以降の波形消失は5例に観察され, CT上, 橋から視床入口部の間に病巣が認められた. N16成分の前半部のみが認められるもの, あるいは振幅低下・潜時遅延は視床入口部, 視床, 内包の間に病巣がみられる19例に認められた. 以上から, N16成分は脳幹部から視床にわたる電位の集合によって形成されると考えられた. N19成分とそれ以降の波形消失は, 視床から内包に病巣が認められた11例と, 広範な中大脳動脈梗塞を示す4例に観察された. N19の振幅低下あるいは潜時遅延は内包, 放線冠と皮質感覚野の間に病巣がみられる31例に観察された. その後方成分は消失するものから, ある成分のみが低下するものなど, さまざまな変化がみられた. N19まで波形が出現し, P24以降の波形の振幅低下ないし潜時遅延が観察された10例では, 前頭葉から頭頂葉の皮質または皮質下白質の一部に低吸収域がみられた. このように皮質感覚野の病巣ではN19が明瞭に出現し, 内包, 放線冠から感覚野の間の病巣によりN19の振幅低下が観察されたことから, N19は内包以降の視床皮質線維が起源と考えられた. (2)SEP所見と移動能力との関係について:SEP所見と退院時ないしは長期入院患者の予後調査時の移動能力との関係をみると, N16成分の消失群では歩行可能となった者はみられず, N19消失群でも歩行可能となった者は40%と少なかった. これに対しN16とN19の振幅低下または潜時遅延群では, それぞれ79%と81%が歩行可能であった. また, P24以降に異常所見が認められた群では, 30%が歩行可能であった. なお, この移動能力とCT上, 錐体路の病巣ありと推定された者とを比較すると, 歩行可能群および歩行不能群ではそれぞれ45%と90%が錐体路に病巣を有していた. 【まとめ】 (1)SEP波形成分の起源について:N16成分は内側毛帯の脳幹部から視床にわたる電位の集合により形成され, N19成分は内包以降の視床皮質線維によることが推定された. P24成分は皮質感覚野によると推測された. (2)N16, N19成分の消失例では歩行不能となることが多く, 振幅低下・潜時遅延例では歩行可能なものが多かった. <質疑応答> 岡島康友(座長):症例の中に前期SEP成分がなくてN60系の後期成分のみ残った例はありますか. 橋本務:脳卒中症例ではありませんでした. 頸髄病変ではありました.
ISSN:0034-351X