運動障害を持つ精神障害者のリハビリテーションに関する諸問題の考察
今回, 何らかの精神科的問題をもちかつ身体障害となった患者の実態を調査することにした. その目的は, 我々が日常の診療において見過ごしている可能性があるこれらの患者の実態を分析し, それらを再認識することから出発し, 最終的にはこの重複障害者の円滑な治療を目指すための基礎資料とするためである. 調査症例は昭和58~63年までの帝京大学リハ科を受診した上記障害に該当する総計60例を用いた. “精神科的問題がありそう”といった記載がやや不明瞭な症例は除いた. そこから以下のことが知られた. 男女はそれぞれ30例と偶然にも同数となった. 患者数は年齢でみると, 20~30歳末満と40~50歳未満に半...
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Veröffentlicht in: | リハビリテーション医学 1990, Vol.27 (7), p.760-760 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 今回, 何らかの精神科的問題をもちかつ身体障害となった患者の実態を調査することにした. その目的は, 我々が日常の診療において見過ごしている可能性があるこれらの患者の実態を分析し, それらを再認識することから出発し, 最終的にはこの重複障害者の円滑な治療を目指すための基礎資料とするためである. 調査症例は昭和58~63年までの帝京大学リハ科を受診した上記障害に該当する総計60例を用いた. “精神科的問題がありそう”といった記載がやや不明瞭な症例は除いた. そこから以下のことが知られた. 男女はそれぞれ30例と偶然にも同数となった. 患者数は年齢でみると, 20~30歳末満と40~50歳未満に半数が占められ, 47例が50歳までで占められていた. また, リハ科への紹介科としては救命センターからのそれが大多数であり, 次いで精神科, 内科, 整形, その他の科であった. 運動障害の発生機転としては, 転落, 切刺創, 熱傷, 飛び込み, 服薬, ガス中毒等の自殺行為の結果としての障害が多く紹介されていた. さらに, 精神科病名をみると精神分裂病が17例, うつ病19例, 神経症6例, その他が14例(神経症の範疇に入る例が多いが)等であり, その精神科病名と障害発生機転との対比も図示した. いずれにしてもリハ科のカルテは運動障害の記載はあるが, 精神科的な記載には乏しかったので, 全例についてそれぞれ十分な考察はしにくかった. 今後さらにこれらの各症例ごとに詳細に検討を加えていくつもりである. この調査段階であえて治療に関して一言できうるとすれば, 治療初期では受傷までの患者の精神症状は身体障害の重症さの背後に隠れてしまったせいか, 理学療法のごく初期では精神症状があるがゆえの治療困難例はあまり見られなかった. 長期治療例についてはいささか異なっているが, これについては後日改めて報告したい. 質問 横浜市立大水落和也:精神疾患を合併する身体障害者のリハビリテーションの場として, ゆったりとした環境, 治療期間を持てない大学病院は適当でないのではないでしょうか. 答 水島繁美:このような重複患者の治療を進めていくには, リハも精神医も含めた, 新しい分野や施設スタッフをつくっていく必要がある. 質問 静岡リハ病院小嶋康則:大学病院に3年もの長期にわたって, 入院治療していた理由は何か. 質問 横浜市衛生局勝島聡一郎:(1)分裂病の特長として意欲欠如, またMajor Tranquilizer使用などの問題があると思われるが, リハ医の立場として, 精神障害者の運動障害のリハで一番困ることについて. (2)退院後, 地域に帰るわけであるが, その地域で展開している保健所に対して望まれることについて. |
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ISSN: | 0034-351X |