8. 多発性硬化症の病態に対する大脳脳幹誘発電位からの検討

36名の多発性硬化症(MS)患者から多種誘発電位(multimodel evoked potentials:MEP)記録を行った. MEPは上 下肢SEP, VEP, ABRからなる. さらに同時期の臨床症状から推定される病変部位を点数(score)化した. 全患者を検査前1ヵ月以内に明らかな増悪を認めた活動期群と, それ以外の非活動期群に分類した. 結果は次に示すとおりである. (1)複数の誘発電位のうち一つ以上異常であったMEP異常出現率は, MS全体では67%であったが, MS確実例に限ると79%と高率を示し, MS疑い例では42%であった. (2)無症候性の患者からは0ないし50%の範...

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Veröffentlicht in:リハビリテーション医学 1988-09, Vol.25 (5), p.358-358
Hauptverfasser: 兼重裕, 今井富裕, 橋本茂樹, 菊池進, 千葉進, 松本博之
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:36名の多発性硬化症(MS)患者から多種誘発電位(multimodel evoked potentials:MEP)記録を行った. MEPは上 下肢SEP, VEP, ABRからなる. さらに同時期の臨床症状から推定される病変部位を点数(score)化した. 全患者を検査前1ヵ月以内に明らかな増悪を認めた活動期群と, それ以外の非活動期群に分類した. 結果は次に示すとおりである. (1)複数の誘発電位のうち一つ以上異常であったMEP異常出現率は, MS全体では67%であったが, MS確実例に限ると79%と高率を示し, MS疑い例では42%であった. (2)無症候性の患者からは0ないし50%の範囲で個々の誘発電位異常を認めた. (3)MEP異常出現率は活動期群で69%, 非活動期群で62%だったが, MEP異常の有無とMSの活動性の間にはなんらの有意な関連性はなかった. (4)活動期群のscoreは非活動期群に比して有意に高かった. (5)MEP異常群と正常群でscoreを比較すると, 活動期では前者で有意に高いscoreを得たが, 非活動期では有意差はなかった. 以上のことより, MEPはMSの活動性の指標とはなり得ないと思われた. しかし, 活動期にはMEP異常はMS患者の病巣の広がりをよく反映し, 非活動期にも慢性の中枢神経病変を示し, 同時期において必要とされる積極的なリハビリテーションの治療計画作成上, 重要な情報を与えてくれると考えられた.
ISSN:0034-351X