17.痴呆老人および虚弱老人にみる骨折の現状
老年者の骨折は, 骨粗鬆症の存在と, 中枢神経, 末梢神経系の機能低下による歩行障害, 平衡障害などから, 転倒骨折をはじめとして種々の骨折が日常的に生じ得る. 骨折としては大腿骨頸部が最も多く, 上腕, 脛骨, 肋骨, 鎖骨, 手関節, 足関節, 膝蓋骨等, さまざまである. しかし, 最も老年者の生命に影響するのは, やはり大腿骨頸部骨折である. この骨折の頻度は, 1956年のRusk, Dacsoの調査では約5%, 1977年の岩倉の調査では約7.3%とされている. 今回の我々の調査では, 約10%にみられている. 男性:女性では女性に1:5で多く, 痴呆:虚弱では, 痴呆群で多い,...
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Veröffentlicht in: | リハビリテーション医学 1986-11, Vol.23 (6), p.315-316 |
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Hauptverfasser: | , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 老年者の骨折は, 骨粗鬆症の存在と, 中枢神経, 末梢神経系の機能低下による歩行障害, 平衡障害などから, 転倒骨折をはじめとして種々の骨折が日常的に生じ得る. 骨折としては大腿骨頸部が最も多く, 上腕, 脛骨, 肋骨, 鎖骨, 手関節, 足関節, 膝蓋骨等, さまざまである. しかし, 最も老年者の生命に影響するのは, やはり大腿骨頸部骨折である. この骨折の頻度は, 1956年のRusk, Dacsoの調査では約5%, 1977年の岩倉の調査では約7.3%とされている. 今回の我々の調査では, 約10%にみられている. 男性:女性では女性に1:5で多く, 痴呆:虚弱では, 痴呆群で多い, また頸部骨折の治療は, 1977年頃までは保存的に手術をしたいものが約20%であったが, 今回の調査では, 8.3%程度で, 観血的療法が大半を占めていた. その予後およびADLに関しても, 痴呆例でもかなり良くなっており, 約75%の例で, 車椅子, 杖歩行などを含め, なんらかの形で, 活動性を持つものがみられた. そして, 寝たきりの症例数は, 1977年には72%に及んでいたが, 今回の調査では, 25%に減少していた. 痴呆老年者の場合には, 術後の管理が困難であったり, リハビリテーションにのせ難かったりで, 手術を見送られる場合が多いが, やはり手術後のほうが, 保存的療法より予後およびADLが良いと判断される. 人工骨頭術後, 十分に正坐も歩行も普通に可能な例が結構みられる. また腰椎, 胸椎の圧迫骨折も半数近くにみられ, 大きな問題である. 質問 東京医大鶴見信男:骨折と痴呆の発生, 進行との時間的関係についてお調べになっておりましたら, 教えてください. 発言 京都府立身障者福祉センター岩破康博:老人の大腿骨頸部骨折の患者で痴呆に陥るのは, 大半が受傷2週以内に起こる. 1ヵ月を過ぎてから老人痴呆になる例は極めて少ない. したがって, できるだけ早期に観血療法を行い, 早期に坐位をとらせ, リハビリテーションに移行させることが重要である. |
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ISSN: | 0034-351X |