妊娠期無機ヒ素曝露による子での癌遺伝子体細胞突然変異を介した発癌増加と多世代・継世代影響

[はじめに] 無機ヒ素は地球の地殻に広く分布する半金属である. 現在, この天然由来の無機ヒ素の摂取による慢性中毒が, 中国, インド, バングラディッシュ, チリをはじめ世界各国で発生し, 大きな環境問題となっている. 主な症状は皮膚疾患で, 後発的には各種臓器における発癌を増加させることが明らかにされている. さらに, 胎児期から小児期の無機ヒ素曝露が成人後の癌による死亡率を高めるという疫学研究の結果も報告されている. また無機ヒ素曝露による生殖機能や神経発達, 2型糖尿病等との関連も報告されている. 我が国においても, 食品安全委員会が食品中のヒ素を「自ら評価」の案件としてとりあげ, 今...

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Veröffentlicht in:日本衛生学雑誌 2014, Vol.69(2), pp.92-96
Hauptverfasser: 野原, 恵子, 鈴木, 武博, 内匠, 正太, 岡村, 和幸
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:[はじめに] 無機ヒ素は地球の地殻に広く分布する半金属である. 現在, この天然由来の無機ヒ素の摂取による慢性中毒が, 中国, インド, バングラディッシュ, チリをはじめ世界各国で発生し, 大きな環境問題となっている. 主な症状は皮膚疾患で, 後発的には各種臓器における発癌を増加させることが明らかにされている. さらに, 胎児期から小児期の無機ヒ素曝露が成人後の癌による死亡率を高めるという疫学研究の結果も報告されている. また無機ヒ素曝露による生殖機能や神経発達, 2型糖尿病等との関連も報告されている. 我が国においても, 食品安全委員会が食品中のヒ素を「自ら評価」の案件としてとりあげ, 今後さらに曝露量評価や毒性機序の研究が必要であるとしている. ヒ素は国際がん研究機関(IARC)がグループ1に分類するヒトに対する発癌物質であるが, その発癌誘導機序については不明な部分が多く, さらに妊娠期の一過的な無機ヒ素曝露が, 子の成長後に癌を増加させる機序についても明らかにされていない.
ISSN:0021-5082
1882-6482
DOI:10.1265/jjh.69.92