P394 脂肪細胞の増殖・分化に対するグリクラジドの効果の解析
【背景】肥満とそれに関連した疾患は欧米のみならず我が国でも増加の一途を辿っている. 肥満は, インスリン抵抗性を基盤として, 糖尿病, 高脂血症, 高血圧をはじめとする生活習慣病を惹起することが知られている. 我が国では国民の5人に1人が肥満と推計され, 医学的だけではなく社会的な問題となっている. 肥満は脂肪細胞が増殖し肥大化した状態であるため, 脂肪細胞の生理的・病理的機構の解明が重要性を増している. 【目的】上皮増殖因子(EGF)ファミリーは, その受容体ErbBファミリーを介して, 上皮細胞をはじめ数多くの種類の細胞の増殖・分化を促進する. そこで, 我々はEGFとErbBのファミリー...
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Veröffentlicht in: | 日本衛生学雑誌 2007, Vol.62 (2), p.676-676 |
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Hauptverfasser: | , , , , , , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【背景】肥満とそれに関連した疾患は欧米のみならず我が国でも増加の一途を辿っている. 肥満は, インスリン抵抗性を基盤として, 糖尿病, 高脂血症, 高血圧をはじめとする生活習慣病を惹起することが知られている. 我が国では国民の5人に1人が肥満と推計され, 医学的だけではなく社会的な問題となっている. 肥満は脂肪細胞が増殖し肥大化した状態であるため, 脂肪細胞の生理的・病理的機構の解明が重要性を増している. 【目的】上皮増殖因子(EGF)ファミリーは, その受容体ErbBファミリーを介して, 上皮細胞をはじめ数多くの種類の細胞の増殖・分化を促進する. そこで, 我々はEGFとErbBのファミリーが脂肪細胞の増殖・分化へ及ぼす効果を明らかにするために, マウス白色脂肪細胞株および褐色脂肪細胞株を用いて検討を行ってきた. 一方, グリクラジド(gliclazide)は, 経口血糖降下薬として現在広く使われており, 膵β細胞のスルホニル尿素受容体に結合しATP依存性K+チャンネルを閉じることによりインスリン分泌を促進する. グリクラジドは, 抗酸化作用や抗血栓作用なども有することが明らかになってきている. 我々は, グリクラジドの多機能性を検索するために, 脂肪細胞におけるEGF-ErbB系への効果について検討を行い, グリクラジドが脂肪細胞の増殖を抑制し分化を誘導することを報告してきた. 今回, その作用機序について詳細に検討した. 【方法】細胞はp53欠損マウス由来白色脂肪細胞株HW細胞および褐色脂肪細胞株HB2細胞を用いた. これらの細胞を分化誘導し, グリクラジドを添加後, EGF刺激時の細胞内情報伝達物質のリン酸化をWestern blotting法を用いて検討した. また, グリクラジドを添加したときのペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)γのDNA結合能の測定を行った. グリクラジドの対照として経口血糖降下薬グリベンクラミド(glibenclamide)を用いた. 【結果】グリクラジドは脂肪前駆細胞の増殖を抑制し, 脂肪細胞の分化を促進するが, これらの作用はATP依存性K+チャンネル開口薬diazoxideを添加しても変化が見られなかった. このことからグリクラジドはK+チャンネルとは違った分子を介して作用していることが示唆された. EGF刺激をした脂肪細胞において, グリクラジドはErbBおよび細胞内情報伝達分子ERKのリン酸化を抑制した. 一方, グリクラジドを添加した脂肪細胞の核抽出物にはPPARγのDNA結合能がみられた. したがって, グリクラジドは脂肪細胞の増殖を抑制し分化を誘導する作用があり, この作用はATP依存性K+チャンネルを介さず, その一部にEGF-ErbB系が関与していることが考えられた. また, PPARγの転写活性に作用していることも明らかになった. これらの細胞内情報伝達系を制御することによって肥満の予防・治療に寄与する可能性が示唆された. |
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ISSN: | 0021-5082 |