P385 若年者における脈波伝播速度とメタボリック症候群との関連(第2報) 縦断的解析

【はじめに】近年, 内臓脂肪の蓄積を基盤として, 血圧高値や高血糖, リポ蛋白異常などの危険因子が集積するメタボリック症候群(MetS)の存在が明らかとなり, 成人では心血管疾患予防のターゲットとして重要視されている. 一方, 我が国における小児肥満は年々増加する傾向にあるが, 肥満児ではMetSの萌芽がすでに認められるとともに, その病態が高い確率で成人期に移行することが示されている. よって, 肥満に対する管理・指導は勿論であるが, 早期から伝導血管系の性状の評価を行うことは一次予防の観点からも重要と考えられる. また, 各種の動脈硬化検査法のうち, 脈波伝播速度(PWV)は動脈壁の硬化に...

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Veröffentlicht in:日本衛生学雑誌 2007, Vol.62 (2), p.667-667
Hauptverfasser: 宮井信行, 内海みよ子, 寺田和史, 吉益光一, 五十嵐裕子, 白石龍生, 森岡郁晴, 有田幹雄, 宮下和久, 武田眞太郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:【はじめに】近年, 内臓脂肪の蓄積を基盤として, 血圧高値や高血糖, リポ蛋白異常などの危険因子が集積するメタボリック症候群(MetS)の存在が明らかとなり, 成人では心血管疾患予防のターゲットとして重要視されている. 一方, 我が国における小児肥満は年々増加する傾向にあるが, 肥満児ではMetSの萌芽がすでに認められるとともに, その病態が高い確率で成人期に移行することが示されている. よって, 肥満に対する管理・指導は勿論であるが, 早期から伝導血管系の性状の評価を行うことは一次予防の観点からも重要と考えられる. また, 各種の動脈硬化検査法のうち, 脈波伝播速度(PWV)は動脈壁の硬化に伴う弾力性の低下を捉えるもので, アテローム性硬化の存在や進展とよく相関するほか, 複数のリスクが軽度に集積するMetSの病態を鋭敏に反映することが示唆されている. 本研究では, 第1報での横断的検討をふまえ, 学齢期の若年者を対象に, MetSの個々の関連因子とその集積がPWVの進展に及ぼす影響を縦断的資料に基づいて検討した. 【対象と方法】我々が実施した健康調査を複数年にわたって受診した者のうち, 2年の間隔でPWVとMetSの関連因子が2回測定され, かつ追跡開始時の年齢が12~17歳(13.8±1.5歳)であった148名(男子66名, 女子82名)を対象者とした. 対象者には, 身長, 体重, 体脂肪率(インピーダンス法)を計測するとともに, 臥位安静状態で, オムロン製HEM-907により左上腕部の収縮期および拡張期血圧を, さらに, 日本コーリン製form PWV/ABIを用いて上腕-足首間PWV(baPWV)を測定した. また, 早朝空腹時に採血し, 総コレステロール(TC), HDLコレステロール(HDL-C), 空腹時血糖(FBS), インスリン(IRI)を測定した. これらの測定値から, TC/HDL比, 平均血圧, HOMA指数(インスリン抵抗性:FBS×IRU405)を算出した. なお, ここでは, ウエスト周囲径の代わりに体脂肪率を用いてMetSを定義した. 【結果と考察】追跡開始時と終了時のbaPWVは有意に相関し, いわゆるトラッキングが認められた. また, 追跡期間中の体脂肪率の変化量は平均血圧, TC/HDL比, HOMA指数の変化量と関連した. 体脂肪率, 平均血圧, TC/HDL比, HOMA指数の4つの変数についての個人の測定値を, 我々が中学生と高校生からなる集団より集積したデータから算出した性別, 年齢別の75パーセンタイル(%ile)値と比較し, 追跡開始時と終了時がともに75%ile値未満, または75%ile値以上であった者をそれぞれ「正常値持続群」, 「高値持続群」とした. また, 75%ile値未満から75%ile値以上に移行した者を「高値移行群」, 逆に, 75%ile値以上から75%ile値未満に移行した者を「正常値移行群」とし, 対象者を4群に分類して比較すると, 追跡期間中のbaPWVの上昇の程度は, 「高値移行群」>「高値持続群」>「正常値持続群」の順に大きく, 逆に「正常値移行群」では追跡前よりも低下する傾向がみられた. さらに, 体脂肪率が高値を示し, かつ平均血圧, TC/HDL比, HOMA指数のうち2つ以上で高値となる場合をMetSと定義し, 追跡開始時と終了時のMetSの有無を判定した. そのうえで, 追跡期間中における病態の変化から, 対象者を「MetS持続群」(n=14), 「MetS新規発症群」(n=18), 「MetS改善群」(n=7), 「MetS未発症群」(n=109)に分類して比較すると, 「MetS新規発症群」と「MetS持続群」では, 「MetS改善群」や「MetS未発症群」よりも有意に高いbaPWVの上昇が認められた. 以上のことから, 若年者においてもMetSの継続および新規発症はPWVの進展をもたらし, 心血管リスクに繋がることが示された. また, MetSの改善はそのリスクを軽減させることが示唆された.
ISSN:0021-5082