P331 ラットにおける5種トリアルキル錫経口投与24時間後の臓器中錫化合物の比較検討

【目的】有機錫の化学形態と生体影響とには関連性が認められている. アルキル錫の基礎的な生体内代謝挙動の知見を得ることを目的とし, 5種類のトリアルキル錫化合物を1回経口投与したラットの24時間後の脳, 肝臓, 腎臓, 血液中の錫化合物を化学形態別に分析し, 検討する. 【方法】Wistar系雄性ラットを用い, 各々のトリアルキル錫をゴマ油懸濁液として1群3匹ずつに1回経口投与(トリメチル錫とトリエチル錫が錫として2.98mg/kg体重, トリプロピル錫とトリブチル錫が錫として18.23mg/kg, トリオクチル錫が錫として24.09mg/kg)し, 24時間後にエーテル麻酔下にて一部採血後,...

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Veröffentlicht in:日本衛生学雑誌 2007, Vol.62 (2), p.613-613
Hauptverfasser: 大平修二, 渡辺啓太, 柳瀬香織, 榎本光紀, 小松渡, 岸久司, 三浦善憲, 松井寿夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:【目的】有機錫の化学形態と生体影響とには関連性が認められている. アルキル錫の基礎的な生体内代謝挙動の知見を得ることを目的とし, 5種類のトリアルキル錫化合物を1回経口投与したラットの24時間後の脳, 肝臓, 腎臓, 血液中の錫化合物を化学形態別に分析し, 検討する. 【方法】Wistar系雄性ラットを用い, 各々のトリアルキル錫をゴマ油懸濁液として1群3匹ずつに1回経口投与(トリメチル錫とトリエチル錫が錫として2.98mg/kg体重, トリプロピル錫とトリブチル錫が錫として18.23mg/kg, トリオクチル錫が錫として24.09mg/kg)し, 24時間後にエーテル麻酔下にて一部採血後, 脱血洗浄しその肝臓, 腎臓, 脳を採取して臓器中各錫濃度を測定した. さらに, 低級アルキル錫(トリメチルおよびトリエチル錫)については, ddy系雄性マウスを用いて同様に測定した. 【結果および考察】ラットにおいてトリメチル錫およびトリエチル錫投与では, トリエチル錫投与の腎臓を除いて, トリ体での存在が主であった. それゆえ, 低級アルキル錫, 特にトリメチル錫の生体に対する影響はラットにおいては, トリ体としての作用が中心と考えられた. 一方, これらの低級アルキル錫の影響を最も特異的に受ける臓器として考えられる脳中では, 投与後24時間では肝臓中などに比べ相対的に高濃度で認められるわけでなく, むしろ低濃度であり脳細胞の障害はその感受性によるものと考えられる. トリプロピル錫およびトリブチル錫投与では, ジ体などの代謝産物が多く認められた. 検出された錫濃度としては, 今回測定した全ての臓器で, トリブチル錫に比べ, トリプロピル錫暴露で高く, 特に血液中でおよそ17倍高く検出された. また, 血液中でジ体とトリ体の存在比がほぼ等しいにもかかわらず, 脳中の存在は主にトリ体としてで, これはトリ体の脂溶性により, 脳血液関門を容易に通過しうるためだと推定した. トリオクチル錫投与では, 他の4種のトリアルキル錫に比べ錫としての投与量は多いにもかかわらず, 肝臓中にトリ体として低濃度で検出された以外は殆んど認められず, このことがトリオクチル錫の比較的低毒性であることと関係あるものと考える. ラットに対して低級トリアルキル錫を暴露すると他の臓器と比較して血中に著しく高く検出されたことから, 低級アルキル錫の血液中での挙動がラットで特異的なものか, 同様な暴露実験をマウスに対して実施し比較検討した. マウスの血中での検出濃度はラットに比べ著しく少なく, トリ体としてはラットのそれらに比ベトリメチル錫投与で0.6%, トリエチル錫投与で0.4%であった. ラットの血中に低級トリアルキル錫と親和性の高い物質の存在が示唆される. また, 腎臓中における検出濃度がラットに比べマウスでは少なく, 尿中からの排泄に種差があるかもしれない. いずれにせよ, 低級トリアルキル錫の暴露ではマウスにおいても代謝産物の割合は少なく, トリ体としての影響や排泄が考えられた. 以上, ラットでは低級トリアルキル錫の検出濃度が他のトリプロピルやトリブチル錫に比べ高く, トリオクチル錫になるとその濃度は, 著しく低い. すなわち側鎖の長いものほど, 投与後の臓器中での濃度は低かった. また, 脱アルキル化反応はトリプロピルやトリブチル錫で比較的速やかに行われるようであった. これらのことはin vivoなどでアルキル錫化合物の生体影響を研究していくうえで考慮すべきことである
ISSN:0021-5082