P320 胎児性水俣病患者の健康現状と生活実態の調査研究
水俣病の公式発見(1956年5月1日)以来, すでに約50年近く経過しようとしている現在も未解決で困難な問題を多々残している. 胎児性・小児性水俣病患者は壮年層に入り, 元来高度の運動障害のため日常生活能力が低下してきている可能性が指摘されている. 従来, 介護を負担して来た両親の高齢化が加わり, 将来の介護の問題が深刻に迫ってきていると認識される. そこで胎児性患者, 家族に対する情報の提供と支援が必要である. また, 今後胎児性患者の医療・介護などの健康支援を行い, とくに在宅患者の二次障害を防ぐ方策が必要であると考えられる. しかし, 胎児・小児性水俣病患者の生活と健康現状を把握していな...
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Veröffentlicht in: | 日本衛生学雑誌 2007, Vol.62 (2), p.602-602 |
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Hauptverfasser: | , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 水俣病の公式発見(1956年5月1日)以来, すでに約50年近く経過しようとしている現在も未解決で困難な問題を多々残している. 胎児性・小児性水俣病患者は壮年層に入り, 元来高度の運動障害のため日常生活能力が低下してきている可能性が指摘されている. 従来, 介護を負担して来た両親の高齢化が加わり, 将来の介護の問題が深刻に迫ってきていると認識される. そこで胎児性患者, 家族に対する情報の提供と支援が必要である. また, 今後胎児性患者の医療・介護などの健康支援を行い, とくに在宅患者の二次障害を防ぐ方策が必要であると考えられる. しかし, 胎児・小児性水俣病患者の生活と健康現状を把握していない. そこで, 本研究は被害の実態解明に近づきつつ, 胎児・小児性患者が望む, 日常に必要な質の高い生活支援と介護・医療を導き出し, 先進的な社会福祉のモデルを示すことも目的としている. また, これから患者のニーズに応じる安心で暮らせる居場所が創り出せていないが現実である. 若年層患者, 家族に対する社会参加と介護施設などの情報の提供, さらに, 福祉支援対策検討の必要性が緊迫されている. 今後胎児性患者の医療・介護などの健康支援を行うに当たっては, 障害度合いにあわせ, 社会参加支援施設ができるような環境をつくり, 患者のニーズに応じて様々の福祉的支援対策を検討すべきと考える. 水俣市と近郊在住および施設に入所する胎児性・小児性水俣病患者48名を対象に, 認知能力, 社会への適応能力, 日常生活能力, 現在の医療受給状況, 今後の自分の介護に関する希望などの項目についての調査を継続的に行う. 更に, 昭和58年から63年まで保健所の在宅訪問データに基づき現在の健康状態との比較を行い, 彼らの健康状態の変化について検討を行い, 今後の彼らの症状変化を予測し, これからどのような支援が必要かを明らかにする. 今回の調査対象者は昭和25年以後生まれた認定患者である. 水俣の重症心身障害施設に入所している14名と水俣市及び周辺在住の調査可能者34名である. 現段階調査の結果によると, 在宅の患者は一部において福祉制度を活用しているが, 様々な困難を抱えながら在宅生活を送っている患者が多く, その中で最も重度障害を持つ患者もいる. 介助の全てが家族に委ねられている状態である. 親の高齢化により, 父親は22世帯のうち15世帯で亡くなっており, 存命中の父親の平均年齢は72.6歳である. 母親が亡くなった世帯は5世帯であり, 平均年齢は74.9歳である. 本人とその家族の高齢化と世帯構成の変化による在宅の生活の困難さが一層目立つようになっている. 本人の加齢と共に親の高齢化が目立ってきているので, 日常の生活や介護面に大きな影響が出ている. 最も深刻な問題は親の死亡が今までの生活を大きく変化させ, 親亡き後の生活支援の問題が急務であることが浮き彫りになった. |
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ISSN: | 0021-5082 |