P130 周産期メチル水銀曝露, PCBs曝露, メチル水銀-PCBs複合曝露の出生仔マウスの脳における遺伝子発現解析
【背景と目的】メチル水銀とポリ塩(素)化ビフェニル(PCBs)はともに神経毒性を有し, 周産期曝露により, 出生後の児の発達に影響が生じることが危惧されている. 両物質はともに難分解性かつ疎水的な特徴を持ち, 生態系における食物連鎖の中で生物濃縮を受け, ヒトは主に魚介類の摂取で曝露を受ける. 実際のヒトにおける曝露では, 複数の化学物質による複合曝露が想定され, メチル水銀とPCBsの複合曝露は単独曝露の場合とは異なる影響が観察される可能性がある. 先行研究においてラット脳の線状体組織にて認知機序に関わる重要な神経伝達物質のドパミンを測定した結果, PCBs単独曝露により組織中濃度が低下し,...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 日本衛生学雑誌 2007, Vol.62 (2), p.454-454 |
---|---|
Hauptverfasser: | , , , , , , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 【背景と目的】メチル水銀とポリ塩(素)化ビフェニル(PCBs)はともに神経毒性を有し, 周産期曝露により, 出生後の児の発達に影響が生じることが危惧されている. 両物質はともに難分解性かつ疎水的な特徴を持ち, 生態系における食物連鎖の中で生物濃縮を受け, ヒトは主に魚介類の摂取で曝露を受ける. 実際のヒトにおける曝露では, 複数の化学物質による複合曝露が想定され, メチル水銀とPCBsの複合曝露は単独曝露の場合とは異なる影響が観察される可能性がある. 先行研究においてラット脳の線状体組織にて認知機序に関わる重要な神経伝達物質のドパミンを測定した結果, PCBs単独曝露により組織中濃度が低下し, メチル水銀との複合曝露で更なる低下が報告されている. そこで, 我々は, 複合的な影響に着目しメチル水銀とPCBsの周産期複合曝露モデルマウスを作成し, これまでに出生仔の神経行動学的な解析(離乳前行動観察, Water maze test, Open field test(8週齢), 自発行動量測定(9週齢))を試みた. 結果として, Open field testの潜時と移動距離について交互作用が認められることが明らかとなった. 現象論として複合曝露の影響が示唆されたが, 周産期曝露が出生後の発達にどう残るのか, その分子論的な解析は今後の課題となった. そこで本研究では, 脳, 特に認知, 情動に関わると考えられる間脳中脳領域に着目し, 遺伝子発現変動を網羅的に解析できるDNAマイクロアレイ法を用いた検討を試みた. 【方法】実験動物として近交系マウスC57BL/6Crを用い, 8週齢の雌に4週間, メチル水銀(Hgとして5ppm)含有の餌により飼育し, その後に非曝露の雄と同ケージ内にて5日間飼育し交配させた. 交配終了後5日後, PCBs曝露群, PCBs非曝露群を設定し, メチル水銀曝露との組み合わせで1)対照群, 2)メチル水銀曝露群, 3)PCBs曝露群, 4)メチル水銀-PCBsの複合曝露群の, 4つの実験群とした. 出生仔の雄について, 生後1日目では全脳, 9週齢では断頭後, 脳を分割し, 間脳中脳領域からQIAgen Kitによりtotal RNAを抽出した. その後, total RNAを蛍光色素でラベル化(1色法)し, マイクロアレイスライド(Agilent社 mouse oligo array 4×44K)にハイブリダイズさせ, スキャナ(Agilent社)にて画像化した. 数値化にはFeature Extraction version 9.1(Agilent社)を用い, 正規化及びデータ解析にはGene Spring GXを使用した. カテゴリー解析にはGO(Gene Ontology), KEGGを用いた. 【結果及び考察】DNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析の結果, 生後1日目全脳において, メチル水銀曝露群の変動遺伝子数が多く, 次いでメチル水銀-PCBs複合曝露群, PCBs曝露群となった. 3つの曝露に共通して変動がみられた遺伝子について検討した結果, PCBs曝露群, メチル水銀-PCBs複合曝露群では発現誘導した遺伝子数が多くなり, メチル水銀曝露群では発現抑制された遺伝子数が他の2群と比較して多い傾向となった. 3つの曝露に共通して対照群に比べ変動がみられた遺伝子には, 発達に関与する遺伝子群, Ca2+の恒常性に関連する遺伝子群, シグナル伝達に関与する遺伝子群, 神経伝達物質の関連遺伝子群等の変動が多くみられた. これらは, GO termのregulation of cell growth, development, calcium ion binding, calcium channel inhibitor activity, intracellular signaling cascade, regulation of neurotransmitter levels等のカテゴリーに含まれ, 発達, 情動等に関与すると考えられている. それを踏まえ9週齢の結果及びカテゴリー解析, パスウェイ解析を含め合わせて報告する. |
---|---|
ISSN: | 0021-5082 |