P109 全国6地域の一般住宅におけるシックハウス症候群の実態と原因の解明-第3報 戸建住宅の室内環境要因と症状の地域差
【目的】平成15年から17年, 厚生労働科学研究「全国規模の疫学研究によるシックハウスの実態と原因の解明(主任研究者岸玲子)」にて, 全国6地域(札幌, 福島, 名古屋, 大阪, 岡山, 北九州)共通プロトコルによる調査を実施した. 第76回日本衛生学会総会にて研究成果の一部を「第1報 新築住宅の有訴率と地域差」「第2報 新築住宅の化学物質環境と症状」として報告済みである. 第3報となる本報告では, 室内環境要因と症状の地域差を明らかにすることを目的とする. 【方法】研究デザイン:平成15年に全国6地域の建築確認申請から築5年以内の戸建住居を無作為抽出し, 住環境と有訴者の自覚症状について自記...
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Veröffentlicht in: | 日本衛生学雑誌 2007, Vol.62 (2), p.433-433 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【目的】平成15年から17年, 厚生労働科学研究「全国規模の疫学研究によるシックハウスの実態と原因の解明(主任研究者岸玲子)」にて, 全国6地域(札幌, 福島, 名古屋, 大阪, 岡山, 北九州)共通プロトコルによる調査を実施した. 第76回日本衛生学会総会にて研究成果の一部を「第1報 新築住宅の有訴率と地域差」「第2報 新築住宅の化学物質環境と症状」として報告済みである. 第3報となる本報告では, 室内環境要因と症状の地域差を明らかにすることを目的とする. 【方法】研究デザイン:平成15年に全国6地域の建築確認申請から築5年以内の戸建住居を無作為抽出し, 住環境と有訴者の自覚症状について自記式調査票を送付し2,998軒(回答率41.1%)から回収した. 平成16年は前年に参加した住居で室内環境測定を承諾した425軒(全居住者数1479名)を対象とし, 秋に調査票で住環境および, 全居住者の生活習慣と自覚症状31項目(Andersson et al., 1988らによるシックビル質問票日本語版に関節症状, 消化器症状などを追加)について質問した. 室内環境要因は, 居間の空気中アルデヒド類・VOC濃度と真菌同定, 床上ダニアレルゲン量を測定した. 平成17年は追跡縦断調査を実施した. なお, 本報告は平成16年度の調査票および室内環境要因測定値を解析した結果である. シックハウス症候群の定義:本研究では自覚症状31項目のうち1つでも「はい, よくあった」で, 「その症状が自宅の環境によるものと思う」と回答した場合をSHS1, 「はい, よくあった」または「はい, ときどき」で, 「その症状が自宅の環境によるものと思う」と回答した場合をSHS2とした. 【結果】SHS有訴率:調査票によるSHS1有訴率の全国平均は8%で, 北九州が最も多く約13%, 大阪で最も少なく4%弱だった. SHS2の有訴率は全国平均で18%, SHS1と同じく北九州が最多, 大阪が最小だった. 症状別には, 眼症状, 鼻症状, 喉症状に地域差が見られた. 室内環境要因:住環境は家族数, 防虫剤使用, 結露, カビに地域差が見られた. 平均室内湿度は名古屋と大阪が低く53-54%, 北九州が高く67%だった. 指針値濃度を超えた住宅が最も多く検出された物質はAcetaldehydeで, 地域別では札幌が最も多く, 23%の住宅で指針値を上回った. 札幌はFormaldehydeとAcetaldehydeの中央値も最も高値だった. 真菌は全国98%の住宅で検出され, 総真菌, Aspergillus属, Cladosporium属の菌数に地域差が見られた. ダニアレルゲンは全国95%以上の住居で観測され, 量的には福島が最多, 札幌が最少だった. 室内環境要因と症状との関係:SHS1/2症状の有無によって室内環境要因の違いがあるかを解析した場合, 全国ではFormaldehyde, Crotonaldehyde, Aspergillus属, ダニアレルゲン量が, 症状有群で有意に高値だった. 一方地域別には, 札幌ではある種の化学物質が, 名古屋, 大阪, 岡山では真菌量および/またはダニアレルゲンが症状有群で有為に高値だった. しかし逆に, 札幌では真菌量, 北九州では化学物質が症状無群で高値を示した. 【考察】本研究は南北に長い日本で全国規模の疫学調査を初めて実施し, 環境要因と症状の地域別の実態を明らかにした. 建築基準法改正により, 建材や内装仕上げの制限などのシックハウス対策が進んでいるが, 依然として(地域差はあるものの)化学物質や真菌・ダニがシックハウス症候群の要因となっていることが示唆された. |
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ISSN: | 0021-5082 |