毒性研究におけるゲノム技術等の現状と課題

1. はじめに 現代社会は多くの化学物質を有効に利用し, 大きな進歩を遂げた. それとともに化学物質の安全性や危険性に関する科学的な理解が深まっているが, 今後解明されなければならない未知の部分も多く存在している. 化学物質の作用機序を明らかにするとともに, その危険性や安全性を正しく評価し, 化学物質の安全な取り扱いについて, 科学的な根拠を示すことは, 今後ますます重要になるものと予想される. 近年, 毒性発現メカニズムの解明および将来的な試験法開発につながる新たな技術的潮流として, ゲノム技術や蛋白質の構造, 機能研究の進展と毒性学分野への応用展開が挙げられる. ゲノミクス, トランスク...

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Veröffentlicht in:日本衛生学雑誌 2007/01/15, Vol.62(1), pp.18-31
Hauptverfasser: 稲寺, 秀邦, 内田, 満夫, 下村, 明子
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:1. はじめに 現代社会は多くの化学物質を有効に利用し, 大きな進歩を遂げた. それとともに化学物質の安全性や危険性に関する科学的な理解が深まっているが, 今後解明されなければならない未知の部分も多く存在している. 化学物質の作用機序を明らかにするとともに, その危険性や安全性を正しく評価し, 化学物質の安全な取り扱いについて, 科学的な根拠を示すことは, 今後ますます重要になるものと予想される. 近年, 毒性発現メカニズムの解明および将来的な試験法開発につながる新たな技術的潮流として, ゲノム技術や蛋白質の構造, 機能研究の進展と毒性学分野への応用展開が挙げられる. ゲノミクス, トランスクリプトミクス, プロテオミクス, メタボロミクス等のいわゆる「-omics」と称される網羅的かつ大量のデータ取得, 解析技術を, 将来的に有害性の評価につなげようとする様々な検討が行われている. 一方, 現段階の個々の構成技術は, 定量性, 再現性, 感度, 及び特異性等が必ずしも十分でないことや変動したパラメーターの生体内での役割の理解についても十分でない.
ISSN:0021-5082
1882-6482
DOI:10.1265/jjh.62.18