集団から個へ

近年ライフスタイルの多様化に伴い, 各個人により食形態が変化してきた. また流通の急速な発展により, 地域の食習慣の特性がなくなりつつある状態である. このため, 健康の保持増進を目的とする衛生学もWHOの定義を尊重し, 個を重視した社会要因を考慮する事が重要となってきた. 従来は地域の健康度を上昇するため, 疫病発生要因分析には調査研究が先ず主であり, 実験的検証が従であった. 近頃, 調査研究は住民の協力が得られなくなり, Biasが多くなりつつある. これも社会のニーズの動向として受け止めるのが正しいと考えられる. 疫学では先ず調査研究, 次に分析研究と言われているが, 体験的調査が出来...

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Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:日本衛生学雑誌 2006-03, Vol.61 (suppl), p.88-88
1. Verfasser: 阪本州弘
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:近年ライフスタイルの多様化に伴い, 各個人により食形態が変化してきた. また流通の急速な発展により, 地域の食習慣の特性がなくなりつつある状態である. このため, 健康の保持増進を目的とする衛生学もWHOの定義を尊重し, 個を重視した社会要因を考慮する事が重要となってきた. 従来は地域の健康度を上昇するため, 疫病発生要因分析には調査研究が先ず主であり, 実験的検証が従であった. 近頃, 調査研究は住民の協力が得られなくなり, Biasが多くなりつつある. これも社会のニーズの動向として受け止めるのが正しいと考えられる. 疫学では先ず調査研究, 次に分析研究と言われているが, 体験的調査が出来たくなり, 医学常識からの疾病要因の分析モデルが考えにくくなっているのは寂しいことである. 分析に統計パッケージをそのまま使うのは疾病発生モデル分析になじまない. 分析結果は生活の知恵に反しないが, 又は実験での結果の妥当性を個人対策に利用出来るかが評価の原点となる. これには多くの分野との共同研究が必要となるものと思われる. 近頃, コンピュータープログラムを用いた結果が眞で, 研究者の考えは従になっているが, これは本を読むだけで体験的実習を通じての衛生学教育をしなくなったためと思われる. 今後は知識の伝授方法が課題となるものと思われる. 従来の疫学は集団での傾向を見て要因を判定したため, 実証に基づく個人単位での判定を欠く場合が多かった. これからは分析方法が発達し, 分子生物学的手法が進歩し, 集団現象より個人の単位での判定が注視されるようになるものと思われる. しかし疫学の要因を見つけ, 対策を立て, 評価すると言う手法は今後とも重要であると思われる. 伝染病流行のモデル及び予防対策の効果判定を学んだ者が近年, 伝染病発生が減少し, 予防対策も確立されたため, 成人病及び健康増進へと関心が移って来た. 成人病では日々の生活が関与するため, 今後個人単位で利用出来る栄養, 運動及び社会経済状態を含めた健康モデル解析の考察が期待される. 環境衛生学が健康増進のための予防医学として益々重要となり, 環境ストレス, 環境汚染物質の生体影響の研究が行われる様になると思われる. このため衛生学を学ぶ者は分析及び分子生物学に興味を示し, 遺伝子を考慮に入れて個人単位で社会環境問題に対応する事を指導する事が重要となるものと思われる. 21世紀には個人単位の健康保持増進のための総合的学問としての衛生学が要求される様に思われる. 学問の発展には多くの若い学者が特色を活かして学会をリードすることが出来るシステムの確立を期待したい. (日本衛生学雑誌第52巻第2号(1997.7)掲載)
ISSN:0021-5082