PCPSの使用により蘇生し得た心筋症患者の術中心停止の1例

我々は, 手術中, 突発的に発現した不整脈から心停止となり, 通常の心肺蘇生法では蘇生できなかった心筋症患者に, 経皮的心肺補助法(PCPS)を用いて救命し得た症例を経験した. 患者は69才女性で, 約10年前から心筋症に罹患しており, 抗不整脈薬としてシベンゾリンを服用していた. 平成11年11月, 右尿管腫瘍のため, 硬膜外麻酔・全身麻酔下に右腎・尿管摘出術を受けた. しかし, 術後, 血尿(膀胱出血)が続き, 術後7日目にはHbが約8gまで低下したので, 同日夕刻, 緊急手術(経尿道的膀胱止血術)を行う事になった. 手術室では, 意識は明瞭であったが. 血圧は90/50mmHg, 脈拍が...

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Hauptverfasser: 印南比呂志, 竹中淳悟, 清水里絵, 葉山泰史, 鈴木健司, 三枝宏彰
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:我々は, 手術中, 突発的に発現した不整脈から心停止となり, 通常の心肺蘇生法では蘇生できなかった心筋症患者に, 経皮的心肺補助法(PCPS)を用いて救命し得た症例を経験した. 患者は69才女性で, 約10年前から心筋症に罹患しており, 抗不整脈薬としてシベンゾリンを服用していた. 平成11年11月, 右尿管腫瘍のため, 硬膜外麻酔・全身麻酔下に右腎・尿管摘出術を受けた. しかし, 術後, 血尿(膀胱出血)が続き, 術後7日目にはHbが約8gまで低下したので, 同日夕刻, 緊急手術(経尿道的膀胱止血術)を行う事になった. 手術室では, 意識は明瞭であったが. 血圧は90/50mmHg, 脈拍が120/分でhypovolemiaの徴候が認められた. しかし, 患者は術後に喘息発作を起こしたので, 全身麻酔でなく, 低位の脊椎麻酔を行う事にし, L3/4から0.3%ジュブカイン1.2mlをクモ膜下腔に投与した. そのさい, 血圧低下にはネオシネジンの静注で対処した. そして酸素を吸入させながら手術を開始した. しかし, 手術開始約7分後, 頻脈から心室粗動細動へと変化し, 心停止となった. 直ちに, 気管内挿管を行い, 人工呼吸と閉胸心マッサージを開始した. そして, アドレナリンなどの投与と直流による除細動を繰り返して行ったが, 十分な心拍自動の再開と血圧の維持はできなかった. そこで, PCPS併用の蘇生術を開始した. PCPS開始後約50分には血圧は80/50, 脈拍は100/分に戻ったので, 膀胱止血術を再開し, 膀胱の止血を完了させ, 患者はICUに収容した. ICUではミダゾラムによる鎮静下にPCPSと人工呼吸を続けた. そして, 2日後にPCPSから, 3日後には人工呼吸から, それぞれ, 離脱した. また, 意識も正常に戻った. 尚, ICU入室時に採取した血清中のシベンゾリンの値が異常に高かった事, ICUでシベンゾリンの点滴投与で重篤な不整脈が発現した事から, 手術中の心停止にもこの薬が関与したと推定される.
ISSN:0288-4348