ニトログリセリン静注にて蘇生し得た冠攣縮の1症例

[症例]症例は40歳男性. 乗用車を運転中, 大型トラックと正面衝突し炎上, 約30分後車内より救出され, 救急車にて当院救急外来に搬送された. 熱傷はIId~III度で, 受傷面積は20%, 部位は後頭~背部上方, 両手背, 両下腿前面~足背であった. 両足背は炭化していた. 既往症はなく, 入院時の胸部X線写真, 心電図に異常所見は認められなかった. 入院翌日, 両下腿切断術・デブリドマン・植皮術が施行されたが, 術中の麻酔・手術操作や血行動態には問題なかった. 気管内挿管のままICUに帰室し, SIMVにて呼吸管理, ミダゾラム・フルニトラゼパム・ブプレノルフィンによる鎮静・鎮痛を約13...

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Hauptverfasser: 増井健一, 長田満, 前田宜包, 田中行夫, 駒井孝行, 熊澤光生
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:[症例]症例は40歳男性. 乗用車を運転中, 大型トラックと正面衝突し炎上, 約30分後車内より救出され, 救急車にて当院救急外来に搬送された. 熱傷はIId~III度で, 受傷面積は20%, 部位は後頭~背部上方, 両手背, 両下腿前面~足背であった. 両足背は炭化していた. 既往症はなく, 入院時の胸部X線写真, 心電図に異常所見は認められなかった. 入院翌日, 両下腿切断術・デブリドマン・植皮術が施行されたが, 術中の麻酔・手術操作や血行動態には問題なかった. 気管内挿管のままICUに帰室し, SIMVにて呼吸管理, ミダゾラム・フルニトラゼパム・ブプレノルフィンによる鎮静・鎮痛を約13時間行った. 術後の血行動態は血圧100-120/60-80mmHg, 心拍数100bpm前後と安定しており, 鎮静終了約3時間後には完全に覚醒していた. 帰室約20時間後, 心電図上ST低下が起こり, その数十秒後には, ST上昇・テント上T波・血圧低下(73/48)を認めた. ST上昇は持続し, ST低下発生から約1分30秒後には電気収縮解離(EMD)となり, 心肺蘇生を開始した. カルディオポンプにて心臓マッサージをしながら, エピネフリン1mg×3・硫酸アトロピン0.5mg・キシロカイン75mg投与したところVFとなった. DC施行(200J・300J)したがasystoleとなり再びエピネフリン1mg静注. さらにDC300J, キシロカイン100mg投与したが心拍は再開しなかった. その後, 心肺停止前のST変化を検討し冠攣縮を疑い, ニトログリセリン5mgを静注したところ, 数分後には心拍数180bpm, 血圧150/85mmHgと回復し, 自己心拍は再開した. [考察]今回経験した心停止は, 心電図所見と, ニトログリセリン投与により心拍再開したことから, 冠攣縮による心筋虚血が原因と考えられる. この症例では心疾患の既往はなく, 入院時心電図に異常所見を認めなかったが, 熱傷や手術による侵襲が加わり, 冠攣縮による心筋虚血が誘発された可能性が示唆された. また, 蘇生後の脳機能は回復しており, 約45分にわたるカルディオポンプによる心臓マッサージは有効であったと思われた.
ISSN:0288-4348