手術終了後体位変換時に心静止を来した症例

今回, 我々は麻酔終了直前の体位変換時に, 心静止をきたし蘇生に難渋した症例を経験したので報告する. 症例;67才, 女性. 153cm, 62kg. 平成7年, 高血圧ならびに心室性不整脈により, 抗不整脈薬投与開始し, 平成8年より最終的にフレカイニドを内服し, 自覚症状は改善していた. 同年, 肺野にラ音が聴取され, 肺線維症と診断されていた. 今回, 肺線維症の精査のため当院内科入院となり, 胸腔鏡下肺生検術を施行することになった. 術前の心電図では不整脈を認めず, abnomalQがIII誘導で認められたのみであった. 麻酔経過;当日朝のフレカイニドは内服せずに, 前投薬としてラニチ...

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Veröffentlicht in:蘇生 1999, Vol.18 (3), p.206-206
Hauptverfasser: 高岡誠司, 三浦美英, 篠崎克洋, 五十嵐あゆ子, 天笠澄夫, 堀川秀男
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:今回, 我々は麻酔終了直前の体位変換時に, 心静止をきたし蘇生に難渋した症例を経験したので報告する. 症例;67才, 女性. 153cm, 62kg. 平成7年, 高血圧ならびに心室性不整脈により, 抗不整脈薬投与開始し, 平成8年より最終的にフレカイニドを内服し, 自覚症状は改善していた. 同年, 肺野にラ音が聴取され, 肺線維症と診断されていた. 今回, 肺線維症の精査のため当院内科入院となり, 胸腔鏡下肺生検術を施行することになった. 術前の心電図では不整脈を認めず, abnomalQがIII誘導で認められたのみであった. 麻酔経過;当日朝のフレカイニドは内服せずに, 前投薬としてラニチジン20mg, アトロピン0.5mg, ミダゾラム3mgを皮下注した. 硬膜外カテーテルをTh6/7より挿入し, プロポフォールにて全身麻酔を導入, ベクロニウムで筋弛緩を得た後, タブルルーメンチューブを気管内挿管した. 術中維持は, 硬膜外麻酔(2%メピバカイン)+Air-O-Pで行った. 胸腔鏡下肺生検術が終了したところで, プロポフォールを投与したまま, 左側臥位から仰臥位へ体位変換したところ, 心拍数が70台から, 急速に減少した. 直ちに, アトロピン, 塩酸エフェドリンを投与したが, 反応せず, そのまま心静止に移行した. アドレナリン等蘇生薬を投与, 閉胸式心マッサージを施行したが, 自己心拍の再開を認めず, 十分な血圧を確保できなかったため, PCPS, 開胸心マッサージを行った. およそ, 2時間にわたる蘇生術後, 自己心拍が回復し, その後循環動態が安定したところで, 集中治療室に収容した. 心停止から集中治療室入室まで約5時間を要した. 術後経過;集中治療室入室後は, 肺線維症が増悪し, 管理に難渋したが, 20日後に抜管した. その後, 肺線維症の増悪・寛解を繰り返したが次第に軽快し, 在宅酸素療法の導入のため転院, 現在に至っている. 考察;本症例は, 心停止直前より心肺蘇生を行ったが, 自己心拍を回復するのに長時間を要した. 心静止の原因を明確に特定はできないが, 体位変換直後に生じたことより, 右冠動脈の血栓性閉塞あるいはスパズムなども考えられる. また, プロポフォール, 硬膜外麻酔などにより, 副交感神経系が優位な状態となっており, それが誘因となったと考えられる. さらに, Class I c抗不整脈薬のフレカイニドは, 心筋塞患者に使用した場合, プラセポより死亡率が有意に高かったこと(CAST), またペーシング域値を上げる作用があるといわれており, 本症例において心停止ならびに蘇生に対する反応を鈍らせた可能性があると思われた.
ISSN:0288-4348