術中に心停止を起こし蘇生し得た1症例

我々は, 胆嚢摘出術中予期せぬ大量出血後に心停止を来たしたが蘇生し得た症例を経験したので報告する. 〔症例〕73歳, 男性, 右側腹部痛により入院, 胆嚢炎の診断にて開腹による胆嚢摘出術が予定された. 術前の心電図, 心エコー, トレッドミルテストでは特に異常を認めなかった. 〔術中経過〕麻酔はプロポフォール, ベクロニウムにて導入し, GOセボフルレン及び硬膜外麻酔にて維持した. 手術は, 開腹後の所見にて胆嚢癌と判明したため, 肝部分切除が追加された. 肝切除時, 急激に出血が始まり止血不能の状態になった. 止血のため肝動脈を一時クランプした直後にVTとなり心停止状態となった. 直ちに閉胸...

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Hauptverfasser: 川谷康, 田北彰, 村田五月, 寺田尚弘, 亀井政孝, 池本毅, 中井哲慈, 内橋慶隆, 唐沢富士夫, 佐藤哲雄
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:我々は, 胆嚢摘出術中予期せぬ大量出血後に心停止を来たしたが蘇生し得た症例を経験したので報告する. 〔症例〕73歳, 男性, 右側腹部痛により入院, 胆嚢炎の診断にて開腹による胆嚢摘出術が予定された. 術前の心電図, 心エコー, トレッドミルテストでは特に異常を認めなかった. 〔術中経過〕麻酔はプロポフォール, ベクロニウムにて導入し, GOセボフルレン及び硬膜外麻酔にて維持した. 手術は, 開腹後の所見にて胆嚢癌と判明したため, 肝部分切除が追加された. 肝切除時, 急激に出血が始まり止血不能の状態になった. 止血のため肝動脈を一時クランプした直後にVTとなり心停止状態となった. 直ちに閉胸式心マッサージを開始しボスミン等の蘇生薬を投与して心拍の再開を図ったがなかなか反応しなかった. 術野より開胸心マッサージを開始してもらい, 大量の輸液・輸血を施行しカテコールアミン等を投与しながら開胸心マッサージを続行した. 約50分後再びVTとなり8回の除細動後に自己心拍を再開した. 瞳孔は散大し, 体温は35.1℃であった. 心拍再開後循環動態は徐々に安定し, ドパミン6μg/kg/min.の持続投与で血圧は148/82mmHgに維持され患者は挿管のままICUに収容された. 〔術後経過〕患者は手術終了2時間後から刺激に対し反応を示し, 3時間後に呼名に反応した. 9時間後には意識は明瞭となり四肢等の麻痺もみられなかった. 〔考察〕今回長時間の心停止にも拘わらず神経学的に問題なく蘇生できたのは, 直ちに心マッサージ等を開始し有効な心拍出量が維持できたためと考えられた. 〔結論〕胆嚢摘出術中に心停止を来たし, 長時間のCPR後に蘇生し得た症例を経験した. 〔反省〕術式の変更に対しては, 必要であれば手術を一時中断させ, 十分な準備をすべきであった.
ISSN:0288-4348