pHが7.0以下の重篤な代謝性アシドーシスを呈した高心拍出量性ショック症例の病態の検討

体液のpHは, 通常homeostasisによって7.35~7.45の狭い範囲に維持されているが, その範囲を逸脱してpHが7.0以下に低下すると致死的であると言われている. 最近1年間に, 我々は高心拍出量性ショックを伴いpHが7.0以下に低下した代謝性アシドーシスの4症例を経験した. 症例経過より, その病態について検討したので報告する. 〔症例1〕15歳男性. 急性リンパ性白血病に対して化学療法中. 6回目の化学療法中に突然血圧低下と昏睡状態となりICU入室. 入室時動脈血pH:6.84, PaCO_2 :38mmHg, HCO_3 :4mEq/L, BE:-26mEq/L, lacta...

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Hauptverfasser: 今泉均, 七戸康夫, 檀上渉, 森近雅之, 佐藤守仁, 本田亮一, 金子正光
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:体液のpHは, 通常homeostasisによって7.35~7.45の狭い範囲に維持されているが, その範囲を逸脱してpHが7.0以下に低下すると致死的であると言われている. 最近1年間に, 我々は高心拍出量性ショックを伴いpHが7.0以下に低下した代謝性アシドーシスの4症例を経験した. 症例経過より, その病態について検討したので報告する. 〔症例1〕15歳男性. 急性リンパ性白血病に対して化学療法中. 6回目の化学療法中に突然血圧低下と昏睡状態となりICU入室. 入室時動脈血pH:6.84, PaCO_2 :38mmHg, HCO_3 :4mEq/L, BE:-26mEq/L, lactate:207mg/dl. 心拍出量(CO):7.4L/min. 肝機能障害を併発したものの, 2日間持続血液濾過透析(CHDF)を行って順調に回復し第5病日ICU退室. 〔症例2〕51歳男性. アルコール性肝障害. 3日間飲酒後2日間記憶なく覚醒後に嘔吐が続き近医受診後, 急性肝不全を疑われICU入室. 入室時動脈血pH:6.89, PaCO_2 :13mmHg, HO_3 :3mEq/L, BE:-30mEmq/L, lactate:289mg/dl. CO:11.1L/min. 急性肝不全に対して血漿交換(PE), CHDFを行い, 順調に回復し第5病日ICUを退室. 〔症例3〕38歳女性. 20年前より神経性食思不振症にて加療中. 精神科入院中トイレで突然の血圧低下と呼吸停止をきたしICUへ入室. 入室時動脈血pH:6.96, PaCO_2 :18mmHg, HCO_3 :4mEq/L, BE:-29mEq/L, lactate:62mg/dl. CO:6.2L/min(CI:5L/min/平方メートル). 第3病日急性心不全に陥ったが, その後順調に回復し第7病日ICUを退室. 〔症例4〕64歳男性. 肝細胞癌合併肝硬変. Th8の転移巣に対して後方固定術を行う. 術中出血6,000mL. 同日夜より出血傾向著明となり, 急性肝不全の管理目的にICU入室. 入室時動脈血pH:6.95, PaCO_2 :41mmHg, HCO_3 :9mEq/L, BE:-23mEq/L, lactate:268mg/dl. CO:9.7L/min. 急性肝不全に対してPE, CHDFを行うも改善せず, 第10病日死亡. 〔まとめ〕重炭酸Naの投与によってBE, pHが正常化し循環不全は改善したが, 高乳酸血症は病態が改善するまで持続した. 高心拍出量性ショックを伴う代謝性アシドーシス症例では, pHが7.0以下に低下しても速やかなpHの補正によって予後は比較的良好であったが, 原疾患の改善がみられなかった症例では救命し得なかった. 血中乳酸値の推移が組織酸素代謝の指標として有用であった.
ISSN:0288-4348