脳卒中後遺症の‘賦活蘇生療法’としての音楽運動療法の意義
一昨年の本学会第15回大会(福井)シンポジウムでの討議を踏まえ, 以後, 音楽運動療法が‘こころの医療として脳機能障害ことに脳卒中後遺症患者にどの様な賦活蘇生効果があるのかにつき, 医学的側面から共同研究を行ってきた. 〈対象と方法〉脳出血術後約9年及び3年を経過した男女患者2名, 感情失禁状態, 弛緩性四肢麻痺, 発語不能, 脳萎縮像が認められ経管栄養で長期リハビリ中. これらの患者に対し, それぞれ5回と3回の音楽生演奏並びにトランポリン上下振動刺激を中心とした音楽運動療法を実施してきた. 医学的検討の一つは心拍変動観察装置LRR-3(GMS社)を用いた周波数解析で, LF/HF成分比で交...
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Format: | Tagungsbericht |
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Zusammenfassung: | 一昨年の本学会第15回大会(福井)シンポジウムでの討議を踏まえ, 以後, 音楽運動療法が‘こころの医療として脳機能障害ことに脳卒中後遺症患者にどの様な賦活蘇生効果があるのかにつき, 医学的側面から共同研究を行ってきた. 〈対象と方法〉脳出血術後約9年及び3年を経過した男女患者2名, 感情失禁状態, 弛緩性四肢麻痺, 発語不能, 脳萎縮像が認められ経管栄養で長期リハビリ中. これらの患者に対し, それぞれ5回と3回の音楽生演奏並びにトランポリン上下振動刺激を中心とした音楽運動療法を実施してきた. 医学的検討の一つは心拍変動観察装置LRR-3(GMS社)を用いた周波数解析で, LF/HF成分比で交感神経活動度を, また“心地よさ”の指標として, いわゆるべきスペクトルの傾き(1/f^β slope)のβの連続変動値の経過をもって自律神経機能を, また一方pEEGモニター(Drager社)またはSYNA ACT-MT11(NEC)による各脳波(δ, θ, α, β帯域)成分の分析等に加えて, ビデオによる視覚的分析を併せ, 音楽生演奏の影響並びに各種の体位での知覚・臭覚刺激, トランポリン上下振動刺激に対する反応を分析してみた. 音楽演奏については, 患者の身内の情報にて元気なときの好きな曲を中心に行った. 〈結果〉健常人の体験報告, ビデオによる患者の表情変化, そしてこれらのデータの分析結果を併せるとそれぞれのイベント(仰臥位, 坐位での介護状況による差, 各種刺激, トランポリン上下振動と音楽生演奏等)に際しての自律神経機能変動並びに脳波の変動の分析結果との間にそれぞれ意味付けることができた. 約半年後には起立させてのダンスを楽しむかの如き表情反応を見せるまでになった. 脳・自律神経機能の測定には動作による多くのノイズが混入し易く, 分析に多大の困難を伴ったが, それでもいくつかの意味あるデータが得られた. 〈考察〉音楽ことに好きな音楽は, 心地よい聴覚刺激でもって脳に好影響をもたらすが, トランポリンによるリズミカルな垂直方向の上下運動も, 本来人間の脳の発達に関与した抗重力調整賦活機能を促し, 刺激とリラクゼーションがうまくマッチし, 繰返すことで脳・自律神経系‘刺激鍛錬療法‘蘇生乃至賦活療法としての意義がある. また家族も共に音楽・トランポリンというリズムにのって楽しみながらリハビリに励める意味でも沈滞気分の患者の回復への意欲を高める相乗効果も見逃せない. |
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ISSN: | 0288-4348 |