術後に発症した肺血栓塞栓症急性期にtemporary IVC filterを使用した2症例

今回我々は, 術後に発症した肺血栓塞栓症(PTE)急性期にtemporary IVC filter(Antheor(R), Boston Scientific社製)を使用し, 良好な経過を得た2症例を経験したので報告する. 〔症例1〕71歳女性. 昭和59年右股関節全置換術施行. 平成9年2月28日左股関節置換術を施行され, 術後第15病日から車椅子移動を開始していた. 術後第18病日深夜トイレに行くため車椅子に移動中, 突然胸部苦悶, 呼吸困難が出現し, 収縮期血圧60mmmgHg, PaO_2 52mmHgと, ションク, 低酸素血症を呈しICU入室となった. UCGでTR III°および...

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Hauptverfasser: 森近雅之, 佐藤守仁, 今泉均, 七戸康夫, 中林賢一, 本田亮一, 金子正光
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:今回我々は, 術後に発症した肺血栓塞栓症(PTE)急性期にtemporary IVC filter(Antheor(R), Boston Scientific社製)を使用し, 良好な経過を得た2症例を経験したので報告する. 〔症例1〕71歳女性. 昭和59年右股関節全置換術施行. 平成9年2月28日左股関節置換術を施行され, 術後第15病日から車椅子移動を開始していた. 術後第18病日深夜トイレに行くため車椅子に移動中, 突然胸部苦悶, 呼吸困難が出現し, 収縮期血圧60mmmgHg, PaO_2 52mmHgと, ションク, 低酸素血症を呈しICU入室となった. UCGでTR III°およびRVP53mmHgの他, 左心内腔の狭小化と左室への中隔圧排像を認めた. 血行動態ではCOは2.0L・min^-1 , SVRは2651dynes・sec・cm^-5 , PVRは390dynes・sec・cm^-5 であった. 臨床経過および検査よりPTEの診断で, 抗凝固療法としてheparin5000Uをone shot静注後, 800U/hで持続静注を開始し, 血栓溶解療法としてt-PA2400万単位を静注した. さらに血栓溶解療法中のPTE再発予防の目的で右側内頚静脈よりtemporary IVC filterを挿入し, その後の肺血流シンチおよび肺血管造影でPTEの確定診断に至った. リハビリに時間を要するため, リハビリ中の深部静脈血栓ならびにPTE再発予防のためにGreen field filterを留置し, 後療法も順調に経過し4月22日退院となった. 〔症例2〕38歳女性. 子宮頚癌(Ib)の診断で平成9年5月28日子宮全摘術を施行された. 術後骨盤内腔にリンパ嚢腫を認め, 嚢腫穿刺とピシバニール注入を行ったが, 嚢腫はCTで両側総腸骨静脈を圧迫する程に巨大化し, 両肢体の発赤・腫脹, さらに急性腎不全および低酸素血症(10L/minリザーバーマスク下, PaO_2 :99mmHg, PaCO_2 :20mmHg)を呈しため, 術後第8病日にICU入室となった. UCG(RVP60mmHg, 左心室内腔狭小化, 中隔の左室への偏位)と肺血流シンチでPTEと診断した. しかし, 酸素化能に余裕があったため, temporary IVC filter挿入を中止した. エコーで深部静脈血栓を認めたためt-PA2400万単位を静注し酸素化能の改善がみられたが, 約1時間後に酸素化能が突然悪化したため気管内挿管後人工呼吸(FiO_2 :1.0, PCV:16cmH_2 O, PaO_2 :69mmHg)とurokinase48万単位の投与を開始した. 酸素化能が若干改善した翌日, 肺血管造影施行後に血栓溶解療法による深部静脈血栓の遊離を予防するために, 右側内頚静脈よりtemporary IVC filterを挿入し, t-PA2400万単位one shot静注, および3日間urokinase投与と骨盤腔内リンパ嚢腫のドレナージ術施行し, 総腸骨静脈の圧排を解除した. 第31病日には肺酸素化能も著明に改善, 人工呼吸器を離脱した. 第32病日の肺血流シンチでは欠損を認めず, 造影でも深部静脈血栓を認めないため, permanent IVC filterは留置せず, 第33病日ICUを退室した. 〔まとめ〕症例2のように血栓溶解療法中に深部静脈血栓が溶解, 遊離してPTEを再発する可能性があるため, 深部静脈血栓が存在する場合には, まずtemporary IVC filterを挿入しておく方が安全である. temporary IVC filterは簡単に挿入でき, 深部静脈血栓を引き起こす病態が改善すれぱ抜去可能であることから, temporary IVC filterには不必要なpermanent filterの留置が避けられる利点がある.
ISSN:0288-4348