誤嚥による迷走神経反射により心肺停止を生じたと考えられた症例の検討

〔目的〕異物誤嚥による呼吸・循環障害の原因は, 異物による気道閉塞が殆どであるが, 稀に迷走神経反射による場合があるとされている. 今回, 誤嚥に伴う迷走神経反射により心肺停止を来したと考えられた症例を検討した. 〔症例〕94歳女性. バナナを食べている最中に意識が消失した. 家族は口腔内に異物のないことを確認しており, 人工呼吸を開始し, 救急車を要請した. 救急隊員も喉頭に異物は認めず, 心肺蘇生術中も換気は良好であった. 来院時も心肺停止状態の為, 挿管し, 蘇生術を継続し, 心拍は再開した. 挿管時の喉頭所見でも異物はなかった. 〔理学的所見〕意識レベルIII-300(JCS), 体温...

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Hauptverfasser: 星野正巳, 三枝弘志, 大澤寛行
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:〔目的〕異物誤嚥による呼吸・循環障害の原因は, 異物による気道閉塞が殆どであるが, 稀に迷走神経反射による場合があるとされている. 今回, 誤嚥に伴う迷走神経反射により心肺停止を来したと考えられた症例を検討した. 〔症例〕94歳女性. バナナを食べている最中に意識が消失した. 家族は口腔内に異物のないことを確認しており, 人工呼吸を開始し, 救急車を要請した. 救急隊員も喉頭に異物は認めず, 心肺蘇生術中も換気は良好であった. 来院時も心肺停止状態の為, 挿管し, 蘇生術を継続し, 心拍は再開した. 挿管時の喉頭所見でも異物はなかった. 〔理学的所見〕意識レベルIII-300(JCS), 体温35.0℃, 血圧69/38mmHg, 心拍数103/分(洞調律). 〔検査所見〕(血算)WBC12900/μl, Hb8.9g/dl, PLT35.1×10^4 /μl. (生化学)TP6.6g/dl, CRP9.2mg/dl, BUN20.6mg/dl, Cre0.8mg/dl, T.bil.1.0mg/dl, AST322IU/L, ALT75IU/L, LDH573IU/L, CK378IU/L, LIP177IU/L, Na123mEq/L, K4.4mEq/L, Cl88mEq/L, BG221mg/dl. (血液ガス分析:O_2 5リットル/分, バッグ人工呼吸中)PH7.337, PaCO_2 51.2mmHg, PaO_2 293.3mmHg, HCO3-27.4mmol/L, BE1.0mmol/L. 胸腹部単純X-P, 頭部CTに異常所見なし. 入院翌日, 喀痰吸引時に径5mmのバナナらしき残査が吸引され, 鏡検でバナナに酷似した食物残査と判定された. 集中治療を行ったが, 意識の改善は得られず, 第69病日に患者は死亡した. 〔考察〕本症例では, 心肺停止を生ずる脳・心疾患や代謝性疾患は認められず, 状況から食物の誤嚥が心肺停止の原因と推定された. しかし, 食物による気道閉塞の所見は得られなかったことより, 嚥下した, 或いは胃内から逆流した食物の誤嚥による間接的な影響で心肺停止を生じた可能性が考えられた. 稀に, 咽喉頭・食道病変や, 迷走神経の中枢・末梢障害があると, 咽喉頭・食道刺激による異常な迷走神経反射により, 不整脈, 心虚血, 喉頭痙攣, 呼吸停止を生じる場合のあることが知られている. 本症例でも, 高齢による神経障害の存在下に, 迷走神経反射を生じた可能性が考えられた. 〔結語〕高齢者では, 誤嚥による刺激でも心肺停止を生じる可能性があり, 家族の蘇生術の習熟は重要であると思われた.
ISSN:0288-4348