低酸素血症時の肝酸素需給動態に及ぼす麻酔薬の影響

肝臓は脳や心臓に比べて, 蘇生後やショック時の低酸素血症に対して抵抗性の高い臓器と考えられているが, これは通常の状況では酸素需要に対して供給が十分にあり, 低酸素血症時には酸素摂取率を上昇させることで対処できるのが一因と考えられる. しかし, 全身麻酔下では肝血流量の減少によって肝酸素供給量が低下していることが多く, 低酸素血症による酸素需給不均衡はより早期から生じる危険性がある. そこで本研究では, ハロセンとバルビタールで低酸素血症時の肝酸素需給動態に及ぼす影響がどのように異なるか, それぞれの回帰式からの分析を試みた. 調節呼吸下に窒素と空気でFIO_2 を0.21から0.06までしだ...

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Hauptverfasser: 水元裕, 松本延幸, 村上康郎, 堀浩一朗, 菅井実, 黒木恭子, 宮崎孝, 堀孝郎
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:肝臓は脳や心臓に比べて, 蘇生後やショック時の低酸素血症に対して抵抗性の高い臓器と考えられているが, これは通常の状況では酸素需要に対して供給が十分にあり, 低酸素血症時には酸素摂取率を上昇させることで対処できるのが一因と考えられる. しかし, 全身麻酔下では肝血流量の減少によって肝酸素供給量が低下していることが多く, 低酸素血症による酸素需給不均衡はより早期から生じる危険性がある. そこで本研究では, ハロセンとバルビタールで低酸素血症時の肝酸素需給動態に及ぼす影響がどのように異なるか, それぞれの回帰式からの分析を試みた. 調節呼吸下に窒素と空気でFIO_2 を0.21から0.06までしだいに低下させ, この間に(1)1.5MACハロセン吸入(F群, n=10), または(2)サイアミラール30mg・kg^-1 ・h^-1 点滴投与(B群, n=11), (3)少量のサイアミラールの間歇投与(C群, n=8)をしながら, 電磁流量計で肝動脈血流量, 門脈血流量を測定し, 動脈血, 門脈血, 肝静脈血の酸素含量とあわせて肝酸素供給量(HDO_2 ), 消費量(HVO_2 )を算出した. HDO_2 に対するHVO_2 の回帰式は, B群でy=1.01+1.23・lnX, C群ではy=0.93+1.22・lnXと互いに重なる曲線が描かれたのに対して, F群ではy=-0.76+1.76・lnXとこれらを下回る曲線となった. またB群とF群では, 曲線の“shoulder”, すなわちHDO_2 の減少に対してHVO_2 が急激に低下し始める点を求めたところ, B群では(HDO_2 , HVO_2 )が(4.88, 2.96)であったのに対し, F群では(6.85, 2.63)と右方に移動しており, HDO_2 の減少がより少ない時点でHVO_2 の急峻な低下が始まることが明らかとされた. これはバルビタール麻酔に比べて, ハロセン麻酔ではHDO_2 の減少に対して酸素摂取率を上昇させることにより, HVO_2 を維持するような代償機構が障害された結果と考えられた. また, 同時に測定した肝エネルギーチャージを表わす動脈血中ケトン体比も, ハロセン麻酔下で著しく低下していた.
ISSN:0288-4348