低血糖発作による交通事故のため溺水になった1症例

今回われわれは, 低血糖発作のため車を運転中海に転落し, 溺水となり呼吸停止を起こした患者を, 無事救命しうることができたが, 退院5日目に突然死亡した症例を経験したので報告する. 63歳, 男性. 平成5年5月20日, 自動車運転中海に転落する. 10数分後救出され, 近くの町立病院に搬入される. 搬入後呼吸停止あり, ただちに挿管される. 自発呼吸が戻るも意識レベル低下, pH7.106, BE-13と代謝性アシドーシス, 血清Na152mEq/リットルと高値を示したため, 当院ICUに搬入された. ICU入室時, 血圧は110/60mmHg, 脈拍は120回/分と頻脈であった. 体温は,...

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Hauptverfasser: 土橋仲行, 洪浩彰, 坪敏仁, 大友教暁, 安田忠仲, 松木明知
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:今回われわれは, 低血糖発作のため車を運転中海に転落し, 溺水となり呼吸停止を起こした患者を, 無事救命しうることができたが, 退院5日目に突然死亡した症例を経験したので報告する. 63歳, 男性. 平成5年5月20日, 自動車運転中海に転落する. 10数分後救出され, 近くの町立病院に搬入される. 搬入後呼吸停止あり, ただちに挿管される. 自発呼吸が戻るも意識レベル低下, pH7.106, BE-13と代謝性アシドーシス, 血清Na152mEq/リットルと高値を示したため, 当院ICUに搬入された. ICU入室時, 血圧は110/60mmHg, 脈拍は120回/分と頻脈であった. 体温は, 35.0℃であった. 意識レベルが清明であり, 自発呼吸が十分なことから抜管し, 蘇生後のためただちに高圧酸素療法(OHP)を施行した. このとき家族および本人から10年前より糖尿病であり, 現在中間型インシュリンを20-0-8単位投与されていること, および事故当日インシュリンを注射してから空腹のまま車を運転したことを聞き, 低血糖発作により意識消失したため海に転落したことがわかった. 以後2回/日OHP施行し, 脳浮腫予防のためグリセオール, デキサメタゾンを投与した. 頭部CTでは, 左前頭葉に陳旧性の梗塞巣を認めるほか異常はなかった. EEGでは, デルタ波が多くなんらかの機能障害があることが示唆された. ICUでの経過は順調で患者は, 第4病日目に近くの開業医に転院した. EEGの所見により, さらに1回/日OHPを続けることにし, 患者は毎日元気に通院していた. 5月29日朝突然腹痛を訴え, 当院へ向かうタクシーの中で心停止していた. 急死する直前の生化学データは, Na115mEq/リットル, K8.4mEq/リットル, Cl79mEq/リットル, 血糖値240mg/dlであったことが後でわかった. 他のデータは, 検査をしていないためわからない. 心停止の原因が高K血症による不整脈であろうが, その高K血症がなぜ起きたのかは不明である.
ISSN:0288-4348