壊死性筋膜炎によるDICより回復した1症例
壊死性筋膜炎は, A群溶血性連鎖球菌による筋膜の炎症が, 皮下組織の血行を障害し, 広範な壊死を引き起こしつつ急速に全身状態の悪化をきたす予後不良の疾患で, 致命率は20~60%と報告されている. 今回当院で, DICに陥ったものの, 早期debridementにより回復した症例を経験したので報告する. 症例は32歳女性で, 6月19日, 誘因なく左下腿に出現した痛みを訴え来院した. 来院時, 局所には軽度の圧痛を認めるのみで全身状態良好であった. 既往には軽度肝, 膵機能障害と貧血があり, 検査で肝, 胆道系酵素の上昇, 白血球増多, 貧血を認め, CPK1632IU, CRP強陽性であった...
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Zusammenfassung: | 壊死性筋膜炎は, A群溶血性連鎖球菌による筋膜の炎症が, 皮下組織の血行を障害し, 広範な壊死を引き起こしつつ急速に全身状態の悪化をきたす予後不良の疾患で, 致命率は20~60%と報告されている. 今回当院で, DICに陥ったものの, 早期debridementにより回復した症例を経験したので報告する. 症例は32歳女性で, 6月19日, 誘因なく左下腿に出現した痛みを訴え来院した. 来院時, 局所には軽度の圧痛を認めるのみで全身状態良好であった. 既往には軽度肝, 膵機能障害と貧血があり, 検査で肝, 胆道系酵素の上昇, 白血球増多, 貧血を認め, CPK1632IU, CRP強陽性であった. 入院後より抗生剤が投与されたが, 21日, 左下肢全体の色調変化と腫脹のため深部血栓性静脈炎が疑われ, 腰麻下に緊急手術が施行されたが, 血栓は認められなかった. この際, 血小板は8.5万/立方ミリメートル, CPK5385IU, 貧血の増強と肝, 腎機能の低下を認め, 患者は強い全身倦怠感を訴えていた. 診断に難渋するうち, 24日には水疱, 皮下出血が出現, この時点で壊死性筋膜炎と診断され, 緊急debridementとなった. 血小板は1.5万/立方ミリメートルと著明に減少, 診断基準からDICが強く疑われた. また肝腎機能, PaO_2 , 意識レベルの低下を認めた. 麻酔は循環動態モニター下にGOIの全身麻酔とし, 血小板, FFPの輸注, ATIII製剤, 利尿剤などの投与を行った. 切除筋膜よりA群β-溶血性連鎖球菌が同定された. 術後炎症は急速に鎮静化し, 数日後には血小板値も正常に復したが, 呼吸不全, 腎機能低下からの回復には10日ほどを要した. 壊死性筋膜炎は稀な疾患であり, その病態はあまり知られていない. 一方で病状の進行は急速で, 抗生剤が奏効しにくいため, 致命率が高い予後不良の疾患である. 今回の症例を経験し, 本疾患を常に念頭においた早期診断の必要性と早期外科的治療の重要性を認識した. |
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ISSN: | 0288-4348 |